迷い狐と悪徳兎[入間銃兎]

出会い14 ページ14

目を覚ますと、そこはいつもの景色じゃなかった。
テント越しに風が吹き、木々が揺れるのが分かった。一体誰が...。





確か、私は父に見つかって引き戻されそうになっていたはず。隠れていたクローゼットから引きずり出され、抵抗も虚しくベットの上で意識が無くなるまで殴打された。





起き上がろうとすると頭がズキズキと痛む。
そこだけではない。身体中、力を入れようとすると痛みで全て抜けていく。どうにか上半身を起こして場所を確認した。





｢あぁ、A。目が覚めたか。おはよう｣

｢おはようございます、理鶯さん。ここ、理鶯さんの家だったんですね｣

｢あぁ、そうだ｣





テントの中は思っているりも居心地が良い。キャンプをするには揃いすぎている設備と快適なベットがそれを物語っている。





｢これを、良ければ飲んでくれ｣

｢これはなんですか？｣

｢ハーブティーだ。リラックス効果が高く心も落ち着くぞ｣

｢ありがとうございます。いただきます｣





ゆらゆらと上品に湯気の立ちこめるラベンダー色のお茶をゆっくりと口に含んだ。飲めないという訳では無いが、銃兎さんの入れてくれた甘いカフェオレに口が慣れてしまい、あまり美味しく感じない。





｢口に合わなかったか？｣

｢...ごめんなさい｣

｢いい、謝ることは無い。ハーブティーは好き嫌いがはっきり別れるからな｣






理鶯さんは私の残したハーブティーを飲み干すと今度は薬品が沢山入ったカゴを取ってきた。
腕を捲られ、また新しい薬を塗ってくれた。





｢綺麗な肌なのに、勿体ない｣

｢そう言えば、銃兎さんは...？父はどうなりましたか？｣

｢犯人が肉親を訪ねたとなると罪に問えないらしくてな。銃兎の家に無断で押し入り、中で待っていた左馬刻を殴った、という事になっているらしい｣






父は銃兎さんの呼んだパトカーで警察署まで連行され、左馬刻さんも証人として同行。私は銃兎さんの仕事が終わるまで理鶯さんの家に預けられることになったそうだ。





｢食事の準備が出来ている。食べよう｣

｢はい｣





夕ご飯はカレーだった。味はとてもよかった。
だが、お肉はカエルだったのはもう無視しよう。足がそのまま入っててびっくりしたのも無視無視。





その夜、木の上で天体観測をした。
理鶯さんが暖かいからなのか、安心からなのか、私はいつの間にか眠りに落ちていくのであった。

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