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「章大君おまたせ。今日はどうする?」
「うん。えっと、Aちゃん明日休みやろ?」
頷くと、章大君はバックパックに入っていたペンケースからごそごそと小さい紙片をいくつか取り出した。
「――あのときの付箋?」
「うん。まだ行ってないとこいっぱいあるし、遅くなってもよかったら、どうかな、と思って」
初めてのデートの時に2人で書いた“やりたいこと”の付箋。
私はあの時何を書いたんだっけ。
章大君のには、確か動物園といくつかアクティビティ系の事が書いてあったはず。
「選べばいい?」
「実はもう決めてあんねん」
番号順ね、と言って「いち」と書いてある付箋を渡される。
中を開くと、そこには“章大君の大学に忍び込む”と書いてあった。
これは、私が書いたやつ…。
「今日は、行けたら3までかなぁ」
続きは後のお楽しみな、と言って章大君はニシシと笑った。
え、でも待って。
「い、いまから行くの?章大君の大学に?」
「うん」
「私、浮かない?」
「何の心配しとんの。先生とか院生とかいろんな人がいるから大丈夫や。この時間ならそんなに人おらんし」
「この格好で大丈夫かな…」
どこに行くかわからなかったから無難なパンツのカジュアルだけど、これは大丈夫なやつ?
「?めっちゃかわいいよ」
なんか緊張してきた…。
「ほら、行こ」
すっと伸ばされた章大君の手を取る。
あったかくてちょっと湿ったてのひらは、いつも私をすごく幸せな気持ちにする。
「どうしたのヤス君、さっき帰らなかった?」「忘れ物〜?」「章ちゃん、たまにはサークルにも顔出してよ」
大学にはいろんな人がいる、と言った章大君の言葉通り、校内には多種多様な人がいた。
章大君はいろんな人から声を掛けられて、あっという間に私だけの章大君ではなくなった。
確かにいろんな人がいるには違いないけど、私は明らかな異分子で、間違いなく浮いていると思う。
“章大君と手をつないで歩いているあのオンナはだれ?”
多分そんな風に思われながら無遠慮にジロジロ見られているのを感じて、手を引かれて歩きながら変な汗をかいていた。
やっぱりもうちょっと真剣に、今日の服装とメイクについて検討するべきだったかも。
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みき(プロフ) - 待ってます! (2021年4月14日 10時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - 私も待ちます (2021年4月14日 8時) (レス) id: 89ed3d2d70 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - いい子で待ってます (2021年4月14日 8時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - イイ二人の世界だ〜(*´艸`*) (2021年4月14日 8時) (レス) id: d5063d2f63 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 二度目の更新有難うございます!丸ちゃん、金木犀の香り…想像できます〜♪♪でも、連絡先交換とか名前で呼ばせるとか!?えっ!!丸ちゃんーー!!!って感じです!!笑 (2021年4月13日 19時) (レス) id: c6ee858f5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりん虫 | 作成日時:2021年3月8日 9時