晴れ時々、かなり晴れ【逆先夏目】 (ページ5)

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5.恋人ページ5

「なー、逆先ってやっぱAちゃんのこと好きなの？」
「ハ？」
「いや、だってずっと一緒にいるし。実際どうなのよ」

　移動教室。
　授業よりかなり早めに理科室へ着いた逆先がぼけっと外を見ているところに、クラスメイトの田中くんは隣へ座って話しかけた。彼は名前は平凡でも、顔は女の子みたいに綺麗でモデルの仕事をよく受けて来る。しかし綺麗なのは顔だけで、中身は普通の男子高校生なので、こうしてクラスメイトの恋愛事情に首を突っ込んだりもするのである。もちろん下ネタも話す。好きなタイプは清楚で乳のよく膨れ女。
　逆先は「どうもなにモ」とため息をついた。

「何度も言ってるけド、幼馴染なんだってバ」
「って言うけど実は？」
「キミみたいなバカにモ…分かりやすいように言うト、」
「おい」

　逆先は「こウ…」と手を前に出して丸を作った。「これが知り合いの枠デ」と言ってその部分の一点を指す。

「ここが恋人枠だとするでショ」
「おー」
「そうするト、Aはここかナ」

　恋人の点とは真逆の場所に人差し指を置いて、くるくると回した。どうも彼の中では恋人とは別位置に幼馴染枠があるらしい。それもかなり別の方向に。

　と、ここまでは良い。逆先は何度同じようなことを聞かれても、ある程度はきちんと答えるようにしていた。万が一「逆先夏目はプロデューサーと付き合っている」と真実のように言われてしまっては、仕事に影響が出かねない。自分のためであもあるのだ。

　がしかし今現在、移動教室途中の廊下で同じようなことを聞かれているAの様子を見てみたい。

「いや違うし笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑どこ見てそんなこと言ってんの笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑そんな的はずれなこと言ってるから彼女に振られるんでしょ笑笑笑笑笑笑笑てか夏目と付き合うなら天祥院英智さんとかと付き合いたいお金持ちそうだし笑笑笑笑笑笑」

　とにかくA、自分には一切迷惑がかからないからと言いたい放題である。学生プロデューサーにはスキャンダルなど存在しない。

　因みに天祥院と付き合いたいというのは本当であるし(お金いっぱい欲しいから)、ついでに言うと強そうだから鬼龍とも付き合いたい。あとは姫宮家の妾になって一生悠悠自適に暮らしたい。そんなこと、教室の外で言おうものなら首が飛びかねないので絶対に言わないけれど。

　彼女、恋人には富・名声・力を求めるタイプである。