17.家族旅行-5：ホテルプール ページ17
時刻にして20時過ぎ。ディナーも終わり、あとはお風呂にでも入って部屋でのんびりしていようかという時間である。
隣の部屋からプールバッグを提げてベルを鳴らしたのはAで、薄いサンドレスの下は水着姿である。昼間に海へ行ったときとは別の、予備で持ってきていた二着目・ワンピースタイプの水着。
荷物の整理をしていた逆先は持っていた洗顔料片手にドアを開けると、どう考えても今からプールへ行く格好をしたAを怪訝な顔で迎えた。
「何？」
「プール行こ！」
「…今かラ？」
おうよと勇ましく答えたAは断りもなく彼の部屋へ入り、勝手にスーツケースを漁って海パンを取り出した。それと洗面所からタオルを二枚。
「ナイトプールって混むんじゃなイ」
「ここのホテル家族連ればっかだから人いないよ。部屋の窓から下のプール見えるからさっき見た」
「…え、本当に今から行くノ？」
そうは言いながらも既にエレベーターホールである。逆先の部屋(厳密にはAの兄との相部屋である)の隣はAとその母の部屋であるため、通りすがりに「ママプール夏目と行ってくるー」と伝えておけば、入浴中の母から「はい気をつけて」と返ってきた。敷地内のプールで、なにより部屋から見えるプールなのでそこまでの心配もない。
プール前で受付からバスタオルを追加と、適当に置いてあるビート板と浮き輪を借りて到着。部屋から見たときにはいた一組のカップルも退散したのか、プールは貸切状態だった。昼間と違ってプールの底がライトアップされているので、雰囲気も出てなかなか良い。がしかし、確かに雰囲気がありすぎて家族連れ、特に小さい子と一緒では来ないだろうなと逆先は思った。自分たちは気にしないから来るけど。
「すごい！ 貸切！ 夜だから日焼けもしない！ やばい！」
「響くから声落としテ」
「飛び込んでいい？ 人いなくてもダメ？」
「何でそんなに元気あるわケ？」
「貸切のプールですよ！？ えてか写真撮ろこれ映えすぎ」
逆先が乗る浮き輪に捕まりながら二人で自撮りをしてストーリーへ載せた。すぐに何件かの既読が付いて、明星から「もう新婚旅行？」と返事が来た。「ちがわい笑」と返して、リアクションが返ってきて会話は終わりである。あとは同じクラスの男子から「😊❤」の絵文字が来た。うるさいやいという話である。
「ねえ待って今ならインスタグラマーなれる、写真撮って撮って撮って」
「どこで撮ろうが一緒だヨ」
「ン？」
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作者名：アボカドサラダ | 作成日時：2023年8月18日 21時
