炎を支えたかった元剣士

凍てつかせる炎 ページ34

いつもより少しぼんやりとしながらその日を過ごした。鬼のいない世界で、まさか自分が綺麗と他人に言われるなんて夢の中で見た夢のように現実感を伴わないもの。



自分がきれいと言われる日が来るよりも音柱様が突然地味に、水柱様が恐ろしく子供っぽい性格に、風柱様が愛してるカブトムシ達を激怒しながら全員逃したと報告を受けるほうがまだ現実味があるくらいだ。



「どうしたんだよホタル、今日何かずぅっとぼんやりしてね？」、そう聞こうと思った瞬間察しのいい彼は名推理、迷推理どちらとも取れる答えを導き出す。



これはもしや、恋煩いなのでは？？？



「酷いわ！！！！相手は一体どこの馬の骨なのよっ！！アチシを愛してるって言葉は、嘘だったのねｯｯｯｯｯｯ！！」



何という猿芝居、何というノリの良さ。



「何を巫山戯てるのよエー実、目くそほどの魅力もないくせに！デュー香も何か言ってやりなさい！！！！」



そう、ここはツイステッドワンダーランド。老若男女全員が生粋の恋バナ好き。それが例え思春期真っ只中の男子高校生だとしても例外ではなかった。



「ホタルはアンタなんかにやんないよ、どーしても欲しけりゃ...アタイとタマ張って一撃でも加えてみな？」



何てノリ良く巫山戯ているが内心は絶対に探り出してやるという殺意と熱意に溢れている。多分ここで相手が物騒なリーチや論外なリーチとかだったら防音魔法を厳重にかけてから必死に説得していた。



しかし



「その、恋慕の情とかではないんだがセベクが、これから毎朝あたしの良いところを少しずつ語る、って言い出したから少しばかり気恥ずかしくてねぇ...」



教室中が凍りつく。リーチ兄弟じゃなかったけど手の早い野郎がいた、学園で唯一の女の子に、手を出そうとする奴が。

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