Valkyrieの人形はプロデューサー (ページ10)

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第八話ページ10

それからスバルくんと真くんも交えて北斗くんが校内を案内してくれた。
「あの教室は防音レッスン室だ」
ズラリと並んだ部屋に番号がふってある。
「俺たちはまだ新人ユニットだから軍資金が少ないけど、防音レッスン室で練習出来たら最高だよね～」
真くんが部屋を眺めながら言う。聞けば、ユニットが結成されると、軍資金というものが支給され、レッスン室を借りたりユニット衣装を作ったりできるらしい。
「？どうした転校生」
「具合でも悪いの～？」
スバルくんが私の方に駆け寄って顔色を伺うようにのぞき込んだ。
別に、具合なんて悪くない。健康体だ。でも、何もできないということが悔しい。
「あ、今度はスマホに何か打ってるね」
彼らに一斉メールを送信した。
『力になりたい』
それだけ。それだけ伝えたかった。言葉が足りないということはわかってる。でも、その一言でもいいから伝えたかった。彼らはしばらくじっと私の瞳を見つめて、やがて顔を見合わせて頷いた。
「じゃあさ！ユニット衣装作ってよ！」
スバルくんが飛び跳ねながら提案する。彼の綺麗なオレンジ色の髪が夕日に反射して眩しい。
「そうか、それなら衣装を注文しなくても済むし。転校生ちゃんも力になれるね！一石二鳥！」
真くんがスバルくんの意見に賛成する。北斗くんも、
「どうだ？転校生。お前は既に『Valkyrie』に所属しているが、俺らの力になってほしい」
嬉しい……。断れるはずがなかった。私は頷いた。