EPISODE1 ページ3
最近、父が私の結婚相手を探してあちこちに見合いの話を持ちかけているらしい。
だが、“恋人がいるから”とか“仕事が忙しくて見合いに行く時間がない”などと言った理由で今まで彼此10人程には断られた。
そして、今日見合いをする相手が11人目。
断られると確定した訳ではないが、きっと今日の人にも断られると思う。
相手は、真選組の副長だと聞いた。よく“鬼の副長”と耳にすることはあるが、どんな人なんだろうか。
「すみません、少々仕事が長引いてしまい遅くなりました」
そう言って入ってきたのは、黒髪で綺麗な顔立ちの男性だった。
その後ろには、付添人とみられる2人の青年がいて、1人は未成年っぽいがもう1人は30歳近くのように見える。
「いやいや、こちらこそ忙しい日に予定を組んでしまって申し訳ない。わざわざ来てくれてありがとう」
父はそう言っていつものように優しく微笑んだ。
私の父は、そこら辺の官僚よりも相手のことを思い遣って仕事をしていると思う。他の官僚は大体ゲスい奴ばっかだけど、父はそういうのが一切ないなと思ったのだ。
こんなことを言っているけど、私は別にファザコンではない(ここ大事)。
「───じゃ、じゃあ…まずは自己紹介からしますか…?」
「そうですね、まだお互い名乗っていませんし」
黒髪の男性はきっと同い年くらいなのに、敬語を使われるとどうにもムズムズする。
けれど今は父もいるし、“敬語じゃなくていい”とは少し言い難かった。
「それなら、私からしますね。
桐谷A、特技や趣味は特にありませんが……よろしくお願いします」
黒髪の男性は、小さく会釈してくれた。
そして、口を開いた。
「土方十四郎と申します。俺も特技や趣味はありません…こちらこそ、よろしくお願いします」
今の私たちのやりとり、まるで新学期の自己紹介みたいだ。
けど─────、
(土方さん、か)
仮に今日の見合いが上手くいって、婚約することになったとしたら、私の苗字も“土方”になるのかもしれない。
不思議な気持ちを噛み締めながら、わたしは新しい話題を考えようと思考の海へ潜り込んだ。
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朝霧。 - ちなみにプロローグに出てきたシオンの花の花言葉は、「君を忘れない」「遠くにある人を想う」「追憶」です! (2023年4月11日 21時) (レス) @page1 id: 1f3ad0d7b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝霧。 | 作成日時:2023年4月11日 18時