シャングリラ【吉沢亮】 (ページ11)

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episode11 ページ11

何で私ばっかり

それは昔から変わらない
好きな人は私のことを好きではない

ユキ:もーさっき会ったばっかじゃん…

リビングから聞こえるのは姉の電話している話し声だった。
…何で姉ばっかり

それも昔から変わらない
私が欲しかった服も靴もぬいぐるみも
私は貰えなくてお姉ちゃんばかり与えられる

お姉ちゃんが彼氏が途切れたことはない
名前を呼んで微笑むだけでお姉ちゃんのこと好きになる

「…」
ユキ:あ、ごめん。部屋行くね

帰宅した私に気付いて自分の部屋に戻っていった

立つだけでもよく分かる
骨格からしてもう違う
ダイエットしても姉のようにはなれない

他人なら良かった
一生関わらずに済むのに
他人なら同じクラスでも関わらなかったらそれで終わるのに

何で姉妹はずっと比べられながら生きなきゃいけないの

「…」

姉が嫌いだ
でもそれ以上に姉に劣等感を抱いている

姉になれない自分が大嫌いだ

・

ミーンミーン…

家に帰りたくなくてコンビニでアイスを買った
こんな日はバニラアイス
当たり付きの棒アイスはいつも当たらない

当たらないと分かっていても人間は奇妙だ

当たるまで続けてしまう

「…んー」

吉沢さん
…インスタとかやってないかな

姉のインスタは知っている
フォローはしていない、ストーリーも見ていない
読者モデルでインスタグラマー
友達もキラキラしている

何で今まで私は気付かなかったんだろう

彼氏がいるけど違う男性と食事に行っている
腕時計の部分だけ見せて異性だとアピールしている

タグ付けされた人物は鍵垢でFF12人
完全に吉沢さん

…12人の一人になりたいなぁ

『一人で何してんの』
「…⁉うわっ」

インスタの張本人が私の座っているベンチの前に立っていた

『危ないよ、女子高生が一人でこんな時間に』
「…襲わないよ。こんなブス」
『Aちゃんが？』
「…」

『可愛いよ、Aちゃんは』

慣れない褒め言葉を好きな人に言われることほど嬉しいものはない
そしたらお世辞でも何でもいい

『何してたの？』
「…家に帰りたくなくて」
『まーたユキと喧嘩したの？』

またってことは吉沢さん、お姉ちゃんから話聞いてるんだ

「…」
『…じゃあ、ちょっとだけ遊びに行く？』

「え？」