episode10 ページ10
「ほら、こいつ。」
マックで高橋君が私たちに見せたiPhoneの画面
ゆり:あー永瀬君?何回か会ったことあるよ
「何で言わなかったの…」
ゆり:いや顔分かんないし…本当に永瀬君?
間違いない
関西弁で頬にホクロがある色黒のサッカー少年
はやと:そのいじめっ子が廉?なんか想像つくわ〜
高橋:廉と幼馴染ってこと?
「…うん」
小学校高学年の時に関西から転校してきたこの男、永瀬廉。
少女漫画にでも出てきそうな名前と名に恥じないルックスの男
私の人生はこの男に狂わされた
小学生の頃から彼はよくモテていた
誰が見ても目を引く見た目と、物珍しいソフトな関西弁
笑った時の爽やかな笑顔は小学生でもときめきを感じた
私も彼に恋するモブ女の一人だった
彼と対照的に私はクラスでも目立つタイプではない
生き物係で金魚に餌やりをするような立場の人間だ
それは今も変わらずなんだけど…
でも小学生なんて好きな人が周りにばれてしまえば明日はない。
仲の良かった女友達にぽろっと永瀬君がカッコいいと言ってしまった翌日
クラス中が私の好きな人を知っていた
もちろん当の本人様にも伝わったそうで。
”あいつ廉のこと好きなんだって”
授業中も休み時間もひそひそとどこからか聞こえるその噂話
俯いて聞こえないふりをしようとする、そんな時に限って耳は敏感だ
”いやーないやろ”
はっきりと彼の声がそう発言した
その時だけでも難聴になってほしかった。私の両耳。
永瀬君とは一度だけ話したことあった。
”いつもこの時間来てるん?”
記憶の中の永瀬君は私にそう聞く
金魚の餌を持ってる冴えないモブ女は頷く
”こいつらって泳いでるだけで死んでいくん、虚しいよなぁ”
水槽の金魚を見つめてそう言う彼のその発言は鮮明に覚えている
小学生でそんなことを言える彼は本当に頭が良いんだろうと
モブ女は思っていた。
「…私、帰るね。」
高橋:え?
はやと:いや、廉だってそんなの覚えてないでしょ?
「…私が嫌なの」
引き留めてくれたゆりちゃん達をよそに私は店を出た
覚えてない
そうであってほしい
だけど、覚えていてほしい
あなたにフラれたモブ女が今でも傷ついているということを
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Y H(プロフ) - 完璧でない夢主ちゃんなんて初めて見て、とても引かれました。 (2019年11月14日 20時) (レス) id: f0597afb21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:君との時間。 | 作成日時:2018年12月21日 17時