キミとキス。 (ページ10)

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アシスタント。ページ10

久しぶりの出勤。

リモートワークと半々になった今

会社にそう人はいないけれど

朝の通勤の電車に人が多いのはあまり変わらない気がする。

テイクアウトしたコーヒー持って

デスクに向かうと

隣のデスクに居た後輩の美香ちゃんが

眠たそうにあくびをしている。

「おはようございます。」

「美香ちゃんおはよう。
なんか眠そうだね？」

「リモートワークって、怠けちゃうからダメですね。
なんか無駄に夜ふかししちゃって。
家で仕事だと、時間気にしなくていいじゃないですかー。」

「確かに。家で仕事って逆にしんどいよね。」

慣れない環境に戸惑っているのは

みんな一緒だね。

早く普通に仕事が出来る日が来てほしい。

「松島さん、ちょっといい？」

チーフから呼び出され

会議室に向かうと、先に佐野くんがいて

こちらを向いて私に軽く会釈した。

「急に呼び出してごめんね。
松島さんのコンペ覚えてる？」

「えっ？あ、はい。」

「あのコンペを見た広告代理店の篠原さんが
あなたを使いたいって連絡がきて。」

「私ですか？！」

「うん。そうなの。
篠原さんが松島さんの作品を気に入ってくれたみたいよ。」

「ありがとうございます。」

「でね、CMなんだけど。」

「CM…？え？CMですか？！」

「そう、柔軟剤のCMなんですって。
そこで松島さんにインテリアのコーディネートをしてほしいと。」

「私、CMとか、広告業界初めてで…っ、」

私がCMに携わるの？

「じゃぁ、やめる？」

チーフは笑ってこっちを見てるけど

目は笑ってない。

怖すぎる。

「チャンスだと思うけど。
松島さん、やってみない？」

「………わかりました。」

「よかったー！
篠原さんにいい返事ができるわ！
で、アシスタントに佐野くん付けるから。
佐野くんよろしくね。」

「はい。よろしくお願いします。」

「あ、はい。よろしくお願いします。」

チーフは私に企画書を渡し、会議室を後にした。

「佐野くん、一緒に仕事するの初めてだよね？
色々迷惑かけちゃうかもだけどよろしくお願いします。」

「こちらこそ。
Aさんと一緒に仕事出来て嬉しいです。
俺、頑張るんで、なんでも言ってください。
広告の仕事やってみたかったから、嬉しいです。」

なんていい子なんだ。

佐野くんは美香ちゃんと同期で、今27歳かな？

明るくて礼儀正しくて。

可愛い後輩の一人。