君と描く物語１２

＃５９１ ページ41

天元side

もう二度と戻れないと思った

Aの中で、俺なんて既にそんな対象にすら無いと思っていた


なのに……それなのに…っ


天元｢……俺は大人だ…っ…自分の感情なんていくらでも隠せる…

俺の存在のせいでお前が進路の幅を狭めてしまってると気付いて、傷付けるのも覚悟の上で突き放した…｣

A｢…！？…じゃあ、あの時私を振ったのは…｣

天元｢…俺はお前の為なら血ぃ吐いたって笑顔で嘘もつく
喜んで悪役に回ってやる…余裕なふりして感情を殺せる……そう思ってた

…思ってたのに…！他の奴がお前に触れる度に底知れない程の嫌悪感や嫉妬に駆られるし、すぐ隣に居るのに触れられないもどかしさといつも戦って…

本当に毎日頭おかしくなるんじゃないかってくらい我慢の連続だったし…

なのに、聞きたくもない時透との噂も聞こえてくるし
挙句キスしてる所も目撃させられるわ…｣ｷﾞｭｯ

A｢え！？見たんですか！｣ﾊﾞｯ

衝撃的だったのか、焦った顔でAが俺を見上げて驚く

天元｢見た……お前を探しに行ったら丁度…

しかも時透に関しては確信犯だった…何か思い出したら腹立ってきたな…！｣ｲﾗｯ

A｢せ…先生…っ｣

だから、あんな物を目撃させられて…校内中に広まるあの噂も耳に入ってくるし
Aはてっきり時透の元へ行ってしまったのだとすら思っていたのに…

A｢…先生？｣

天元｢…本当に俺でいいのか……？

一度は逃してやったけど、もうこの手掴んだら
泣いて頼んだって二度と離してやれねぇぞ｣

A｢……っ…うん…！先生がいい…

今度は頼るばっかりじゃなくて、先生と一緒に前に進んでいけるように大人になるから…もう離さないで｣

そう言うと、Aはやっと俺の背中に腕を回して
懐かしくて愛おしいその体温を全身で伝えてくれた

天元｢…A、顔上げて｣ｽｯ

A｢…っ｣

涙ぐむAに優しくキスを降り注ぐ

その唇に触れて、やっと戻って来れたんだと実感した


二度と重なる事の無いと思っていた、その柔らかな唇

そっと優しく包み込んだ頬には涙が伝い、潤んだ瞳には俺が映る


きっと俺は世界で一番幸せ者だな…
こんなに愛おしくてどうしようも無い存在に出逢えた事…そんな人が俺の元に望んで来てくれた事

幸せで幸せで…どうしようも無い……

天元｢…A…愛してる……｣

A｢…///｣

天元｢…やっと言えた…｣ｷﾞｭｯ

A｢私も……愛してます、先生！｣ｸﾞｽｯ

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