６．無法地帯 ページ6
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「失礼します……」
先生の後を追って、その少し埃臭い部屋に入る。
入学してから1年間、ここには1度も入ったことがなかった。
入る機会もなかったし、理由もなかったから。
その部屋は見渡す限り本棚で、詰め込まれた本が少し埃をかぶっている。
誰のために置かれているのか分からない黒革のソファには、いつのか分からない書類と本が雑然と積まれていた。
それも埃を被って、本の表紙が霞んでいるくらい。
先生は部屋の奥までスタスタと歩いてガラッと窓を全開にした。
入ってきた風で埃が舞って、けほ、とちいさく咳をして
「前任とか他の先生も、古典の先生も使ってないみたいでさあ、」
とソファの埃を払った。
立ち尽くした私に、「あれ、座んないのお？」
とさっきとは違った間延びした声。
多重人格なのかな、なんで思いながら
「はい、」
と素直に腰を下ろすと、デスクからキャスター付きの椅子を引っ張ってきて、椅子の背を私の方に向ける。
先生はそこに跨るようにして座った。
背もたれに違う意味で凭れるように両腕を置いて、じっと私を見てる。
私は目が合ってるわけじゃないけど、見られてるのは何となく感じた。
「あの、」
「ん？なに？」
始業式のためにピシッときていたスーツのポケットから出てくるとは思えないほど、クシャクシャになった煙草のソフトケース。
それを振って、口に煙草を咥えた。
「あ、校内禁煙、ですよね、？」
思わず、なぜか確認するように言ってしまった。
「そうだねえ、」
咥えたまま喋って、シュッと回すタイプのライターで火をつけてる。
「誰も来ないならさ、ここは俺の部屋だよねえ」
ふふと笑って煙を吐く先生の周りが、風で舞って陽に照らされた埃と紫煙でふわふわと光る。
「だからここは、無法地帯？てきなさあ」
新任なのに、ゆるっゆるの喋り方に、ゆるっゆるのモラルとマナー。
先生にしてはなんだか、安心した。
「んで？バイトのことだけどさ」
やっぱりそれだよね
話の本題が来たことに、少し構えて俯いて、目の前のローテーブルの上の本を眺めた。
読みたいとも思えない自己啓発本の表紙が、私をもっと憂鬱にしてくる。
「咎めるつもりないから」
「へ？」
構えていた気持ちが少し解けて、間抜けな声が出た。
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憂(プロフ) - みやさん» みやさん。コメントありがとうございます。こちらの私情であるにも関わらず応援して頂きまして、本当にありがとうございます。これからも先生と主人公ちゃんをよろしくお願い致します( •̥-•̥ ) (2022年12月1日 9時) (
レス) @page40 id: 39a6e0a5de (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 憂さん、はじめまして せつと申します。人生最大ゴタゴタの中素敵なお話を紡いでくださりありがとうございます。スローでもよきよき♪待ってますので 憂さんのペースでどうぞ。いい子で次のお話待ってますね。 (2022年12月1日 9時) (レス) @page40 id: a88f73c135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：憂 | 作成日時：2022年11月4日 3時
