15．欲しい。 ページ15
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「せんせ、」
「ん〜？」
私の隣まで歩いてきて、しゃがんだ先生は、ズボンのポケットから煙草を出した。
新品であろうそれを、ライターで開け口を炙って、ビニールを溶かしてる。
「禁煙ですよ。」
「あれ、交換条件成立してるはずだけどな〜」
なんておどけたように言って、銀紙を破って煙草の箱を叩く。
時折吹く少し強い風が、まだ少しだけ冷たくて、頬を掠めて。
先生のライターの火が風で消えた。
「私も吸いたい。」
何となく言ってしまった。
本当になんとなく。
喫煙者がストレス発散になるとよく言っているから。
ストレス発散出来るなら、少しだけ欲しかった。
私が屋上にいることすら咎めてこない先生に
甘えていたのかもしれない。
「なぁにいってんの笑」
先生は叱ることも咎めることもせずに、笑って煙草を咥える。
教師が生徒に煙草を吸わせるなんて、それこそ問題だ。
大問題になる。
でもその困ったように笑った顔を見て、どうしようもなく、先生の煙草が欲しくなった。
「べつに、長生きしたい訳でもないし。」
ぼそっと呟いて、私も隣にしゃがんだ。
落ちていた枯葉をいじりながら、先生の煙草の匂いを感じて。
「A」
呼ばれて先生の方を向いたら、目の前に白く靄がかかった。
煙草の匂いと、少し目に染みる紫煙の感覚。
思わず目をつぶったら、また風が吹いて
その紫煙がどこかに消えてしまった。
「ガキは副流煙で我慢してなさい」
私の顔に煙を吐いたはずの先生の顔は、もう正面に向いていて。
横顔が綺麗だな、なんて見つめることしか出来なかった。
いつの間にか火を消した先生は、ゴロンとそのまま横になって
「曇ってんな。」
寂しそうに空を見つめた。
しゃがんだまま上を見たら、灰色の曇が、広いはずの空を埋めつくしていた。
同じだと思った。
今の私も、何か灰色の感情に支配されて。
どうなるのか分からない状態が怖くて。
これから先
晴れるのか、雨が降るのか。
何も、分からなかった。
ふと隣の空気が動いたのを感じて
頬に触れた暖かさ。
「そんなに泣いたら雨降っちゃう。」
と、私の涙を親指で拭う先生が
私より悲しそうに目尻を下げていた。
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憂(プロフ) - みやさん» みやさん。コメントありがとうございます。こちらの私情であるにも関わらず応援して頂きまして、本当にありがとうございます。これからも先生と主人公ちゃんをよろしくお願い致します( •̥-•̥ ) (2022年12月1日 9時) (
レス) @page40 id: 39a6e0a5de (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 憂さん、はじめまして せつと申します。人生最大ゴタゴタの中素敵なお話を紡いでくださりありがとうございます。スローでもよきよき♪待ってますので 憂さんのペースでどうぞ。いい子で次のお話待ってますね。 (2022年12月1日 9時) (レス) @page40 id: a88f73c135 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：憂 | 作成日時：2022年11月4日 3時
