君、今ここに【及川徹】 (ページ19)

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亡霊、と聞いたときは自分に霊感があったなんてと生ぬるいことを思っていた

しかし、Aの話は想像以上に辛いものだった

生前のときに出会っていたら、俺はどうしていたのだろうか

そのことばかり頭に浮かんでは消えを繰り返し続けた

笑顔の裏にある涙に気づけた人が居てくれてほんとによかったと思う

それと同時にそれが自分だったらななんて考えてしまう

助けたい、そう思った

今からでも遅くはない

彼女が本当に消えてしまう前にしておかなけれでいけないこと

それをすべき人は本当は俺じゃないのかもしれない

けれど早く言わなきゃいけない気がした

宮城に行く機会はあっただろうか

いや、無いなら作ってしまえばいい

向こうにいる親戚に頼み込んで泊めてもらおう

決して彼女に好意を抱いてるわけではない

そう信じたい、例えそうであったとしてもなかったとしても

彼女のために俺は行動を起こさなければいけない

あんなに苦しそうに笑う人を放っておけるはずがないだろう

いや、やっぱり俺は彼女に好意を抱いてるんだろうな

自嘲してしまった、つくづく自分は馬鹿だな