参拾ノ型─無駄なんかじゃない ページ33
廉は布団に顔を埋める
「ねぇ…廉?」
「なんや海人」
「僕は、廉の神楽ちゃんって子に恋してた時の気持ちも
大吾さんに嫉妬してた時の気持ちも無駄な気持ちでは無いと思う」
「え?」
廉が少し顔を上げる
「だってさ、神楽ちゃんに恋する気持ちで廉はこんなに強くなれた訳だし、
廉が暴走したときだってさ、
あの血鬼術はただ不の感情を倍増させるだけだから廉を強くしたわけじゃないじゃん?
だからあれは廉の元々持ってる力が暴走したんだから、
廉はあんなに一気に鬼を倒せるほど強いって事なんだよ
だから…
その時の気持ちと、その時間は全く無駄なんかじゃないんだよ」
「海人…
ありがとう…」
廉は僕の腕を握りしめる
「ええ友達が出来たもんやなぁ…廉も」
その様子を、大吾さんはそう呟きながら見ていた
………
「紫耀〜」
病室に入ると、紫耀が布団に入っていた
あんなに大怪我なのに、かなり元気そう
「海人!廉はどうだった?」
「うん、大丈夫だった」
「ところでさ、」
紫耀は僕が手に握りしめている黄色のお守りを指差して言った
「それ、今回の戦いの時にも持ってたけど、大事なお守りなの?」
「…うん、実はこれ、死んだ彼女の遺品なんだよね
僕の彼女…向日葵は花柱で、いつもこのお守りを持って任務に行ってた
このお守りにはね、ひまわりの種が入ってて、
このひまわりの種を食べると、
自分の命と引き換えに、伝説の呼吸『向日葵の呼吸』が使えるようになるんだ」
「そう…なんだな
でも、自分の命と引き換えって…」
「うん、なんかね、
この向日葵の種は夜でも太陽の光が集められて、
刀に太陽の光を集めると同時に自分の体にも太陽の光を集めちゃって、
それで最後に体から向日葵が生えて死んじゃうらしい…」
「そうなんだな…
海人」
「うん」
紫耀は僕の肩を掴み、まっすぐな眼差しで言った
「俺は、海人には死なないでほしい
だから、いくら彼女の遺品だとしても、絶対使うんじゃないぞ」
「うん…分かった…」
無惨を倒すとき以外の話だけどね…
「いいな」
「もう、そんなにほいほい命捨てないから〜!」
しかし、そんな様子を見ていた者がいた
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作者名:秋麗司 | 作成日時:2023年7月4日 18時