幸福ノ音色 【宇髄天元】

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バレンタイン当日。
今までの雰囲気とは打って変わって大変なことになっている。
朝から至る所でチョコ配り、渡し合い、黄色い歓声、終いには実はカップルであったことがバレている人達。
こんな所に冨岡が来れば全部没収だろうに。


「…これは不要物だ、没収するぞ。」

「うそぉー！！冨岡先生！！」


どうやらもう既に見回りに来ていたようで、没収された女子生徒は泣いている。

冨岡のことだから例外なく取り上げるだろうし、Aは放課後渡しに行こうと決めた。
どうせいつもの如く美術室に行くことになるわけだから。


「善逸？善逸大丈夫か！」

「なんだよ炭治郎……大丈夫なわけねーだろうがぁぁ！！」

「うおっ」


Aが廊下で生徒達が群がっている所を何とか抜け出し教室へ行くと、昨日同様善逸が騒いでいるのが見えた。
明らかに今日の善逸からは真っ黒いオーラが出ている。


『おはよ〜』

「おはよう、A！」

「A、良いとこに来たな！コイツ本気でうるせーからどうにかしてくんねえー？」

「はぁ！？」

『ちょっとちょっと』


伊之助と善逸がいつも通り取っ組み合いを始める。
それにしても、なぜ善逸はこんなにも騒いでいるのだろうか。
炭治郎に禰豆子に作ってもらうように頼んだはずだが。
そう思ってAは、炭治郎を見ると炭治郎はハッ！と思い出した様にカバンの中をガサゴソと漁り始める。
忘れていたのが分かりやすい。


「善逸！」

「なんだよ！同情ならいらねえぞ！！」

「違う！これを見てくれ！」


炭治郎は、そう言って鞄から取り出したのを善逸に向かって見せつける。


「チョコパンだ！禰豆子からだぞ！」

「えっ……えっ……！？」


善逸は遠慮を知らないのかというほど勢いよく奪い取ると分かりやすく頬を赤くしてボロボロと涙を流した。

なんとかこれで騒がしいのは収まりそうだ。


『良かったね善逸！』

「禰豆子ちゃんが…俺に…？本命ってことでいいんだよねぇぇっ！？」

『……あーーうん。それは、ドウナンダロウ…』


確実に義理ではあるとは思うがAは、善逸が相当喜んでいるためそういうことにしといておこうと思った。
とは言っても、あの優しい禰豆子のことだから言わなくても作っていたのだろうな。

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