幸福ノ音色 【宇髄天元】

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バレンタイン前日。
1週間前よりも明らかにそわそわし始める生徒が増えた。
その中でも人一倍うるさいのが、今Aの目の前にいる。


「バレンタイン明日じゃん！？みんなチョコチョコって言ってて嫌なんだけどぉぉぉ！？俺も禰豆子ちゃんからのチョコほしいなぁぁ、いってぇぇえ！？何すんだよ伊之助！」

「朝からうるっせんだよおめェは！！」


伊之助がそう言ってドゴッ！！と一発殴った相手は。
そう、善逸である。

屋上でいつも通り炭治郎・善逸・伊之助・Aで弁当を食べているのだが、善逸は朝からずっとこんな感じだ。
中等部の時も、自分から女子の所に行って逃げられたり道行く人に声を掛けたりと、大分問題児に見られているだろう。


「Aちゃんは！？俺にくれるよねぇ！？」

『あーー…今年は宇髄さんだけにあげようかな、と…』

「ギャァァァァッ！！頼みの綱のAちゃんから貰えないなんてもうゼロ確定じゃぁぁん！？」


Aは思わず目線を逸らして耳を塞ぐ。
屋上で一応外なのだからもう少し声のボリュームを落としていただきたい。
伊之助はもちろん、炭治郎ですら迷惑そうな顔をしている。

確かにAは今までは毎年3人にあげていた。
だが、今世で初めての恋人であり、大正時代にはなかったイベントだ。
それなら1人だけに捧げたいと思うのは間違いではないだろう。

しかし納得していない善逸は叫び続ける。
これはもう、こうするしかない。


『炭治郎…』

「あぁ、わかった…言っておくよ…」

「俺のも頼むぜぇ！」

「何ィ！？何の話してるの3人して！？」


善逸はチョコが貰えれば良いのだから義理でもなんでも喜ぶ。
Aは、炭治郎を見て禰豆子に作ってもらうように目で伝えると、すぐに意図を汲んで呆れた顔をした後に頷いてくれた。
禰豆子は優しいから作ってくれるはずだ。


「俺のチョコォォーーー！！」

「…お前達、屋上で弁当を食うなと何度言ったら分かるんだ。それから我妻は外で叫ぶな。職員室まで聞こえているぞ」


善逸の大声のせいで、屋上で弁当を食べるという校則違反をしたことが生活担当の冨岡にバレた。
A達は何度も同じ違反行為をしているため、いくら元鬼殺隊が多いと言えども教師達の間では悪い意味で有名だった。

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