白い鬼の物語【鬼滅の刃】 (ページ10)

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＊9話ページ10

お腹すいた。

『！』

咄嗟に立ち上がって、口元を塞いで、彼を目に移さないように顔を背けた。

「え‼?なんで⁉俺、まだなんのアプローチもしてないのに嫌われたの‼!?」

たんぽぽみたいな人は、私が顔を背けたのに吃驚しているみたいだった。

そのまま、その人を置いて、元きた道を全速力で戻る。

あの小屋は、深い森の中にあって、かなり暗い場所にある。

昼間は兎も角、夜だと殆ど見えない場所だ。

だから私は、昼間も外に出ることが出来た。

”人間”だった頃は。

小屋の扉を開けて、勢いよく閉める。

そのまま、力が抜けたみたいにしゃがみこんだ。

ここまで来れば、あのたんぽぽの人も来ないだろう。

私が、お腹を空くこともない。

それなのに。

―――コンコンッ

どうして？

「ここに、いるんだよね?俺、耳がいいから、君の心臓の音が聞こえるんだ。」

心臓の音？この人は何を言っているんだろう。

「君は…鬼、なんだよね。」

分かっているのなら、何故来たの?

「でも、普通の鬼と違って、君からは、炭治郎みたいな…あ、炭治郎っていうのは俺の友達なんだけど、そいつみたいに、優しい音がするんだ。

　人をまだ食べてない音がする。」

意味が分からなかった。

炭治郎って誰?

たんぽぽの人のともだち、らしい。

ともだちって、何?

淡海は、そんなこと教えてくれなかった。

否、教えてくれた気がしたけど、理解できなくてあまり聞いていなかったんだ。

「…君は、ここでひと、」

『帰って。

　ここに、来ないで。

　貴方は誰？

　どうしてここにいるの？』

淡海がいたら、「人の言葉を遮るなんて、失礼な真似してはいけない」と私を叱るんだろう。

でも、ごめんなさい、淡海。

今の私には、相手の言葉を待つ余裕なんてなかった。