【あんスタ】笑顔の魔法【男主】 (ページ4)

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Reminiscence＊＊ページ4

「知ってるから要らないよ、自己紹介(それ)」

颯は興味無さそうに相手の声を切り捨てた。1年生とは思えぬ傲慢さである。

「本当、それなりの重要人物が随分と長い間沈黙を守っていたね。かと思えば、最近はきな臭い動きばかりしている。何をするつもりかなんて愚問だよね」

「君が何を言いたいのか、僕には分からないな。何処で聞いた話なんだい？…それに、君に何ができる？」

一瞬で両者の間に剣呑な雰囲気が満ちる。

「…何も。新入生である俺に出来ることなんて何もないさ。何か出来ると思う程驕ってないよ。それよりさ、年上を敬えって風に怒らないの？」

先程の緊張感が嘘のようにおどけたように答える颯。

「…僕は後輩に敬ってもらうほど出来た人間ではないからね」

一瞬目を伏せた彼はそんな事を言う。

「俺が言うのもあれだけどそういう問題でもないよね。まあ、いいならいいや。というか此処、一応立ち入り禁止でしょ。何しに来たの？」

颯はベンチに座って問い掛ける。と思えば、何を考えたか、招くように自分の隣を叩く。

「一応じゃなくて、立ち入り禁止だよ」

相手は大人しく颯の隣に座ってそう返す。

「とはいえ、1人になりたい時に屋上はうってつけだからね。何となく来てみたら君が歌ってた。それで思わず聞き入ってしまったんだ」

気負った様子もなく話す彼を見て、反対に颯の胸にはえも言われぬ不快感が込み上げてくる。補足しておくと、この不快感は彼に対してではない。

「あんたは強いね」

颯の発言に、彼は瞬きを繰り返す。

「これでもだいぶ病弱なんだよ？」

「知ってる。だから強いんだろう」

微妙に噛み合わない会話をしている。

「あんた、友達居ないだろう」

不意に颯がものすごく失礼なことを言う。

「必要がなかったからね」

彼は怒ったふうもなく答える。

「隣人愛って知ってるか？」

「実に愚かだよね」

「宗教に愚かもクソもあるか」

他愛もない会話を繰り広げる。

この時、確かに颯と彼とは対等だった。人に対して興味を抱かない2人は相性が良かった。

どちらも俯瞰して物事を見て状況を判断する。

2人の相違点と言えば、颯は自分が他者へと与える影響も考慮する為に人間関係の構築が得意で、彼はそこが下手くそだった。

これはまだ過去の物語も始まってない、そんな時の出会いだった。