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朝霧悠花の登校時刻、4 ページ6

中学の内申書に書かれていた、「礼儀正しく明るい、心優しい優等生」という評価は悠花に欺かれていた教師が書いたものだと、相澤は確信し始めていた。

いや、決して、悠花が粗野で人情がないという訳ではないのだ。

悠花は今時の子には珍しいくらいきちんと敬語も使うし、作法もしっかりしている。

優しさだってある(その相手がやや限定されることを、相澤含め悠花に大切にされている人間と、悠花の猫被りに騙されている人間は知らないが)。

だから、間違ってはいないのだが…

ただ、愛想の良い笑顔の奥で、獲物を追い詰めようとする狩人のように淡々と光る金の瞳は、どう見たって「礼儀正しく心優しい優等生」のものではない。そういうことである。


相澤は、悠花のこの行動に気づいてから何度目になるか分からない溜息を、今度は心の中だけに吐いた。

そして、何を言うべきか考える。


ヒーロー活動中に怪我をしてケアが出来なくなったらどうする?
……悠花は治癒能力を持っているから、どんな怪我も一瞬で治してしまう。

インターンなどで場所が遠く離れていたら?
……このご時世、距離なんて問題にならない。電話もメールもあるのだから。

悠花本人が過労や心労で倒れたら?
……その辺りの調整を誤るようなことはしないだろう。悠花は馬鹿ではない。

疲れない、というのは生きている以上不可能___特にヒーローを目指すのなら___なので、倒れる・体調を崩すなどの明確な不調が出ない限り、この方面では論破出来そうにない。

そもそも、能力が高すぎるから人を頼らないだけで、もし自分一人ではなんとか出来ないとなったらきちんと他人を頼るはずだ。
ただ、そんな機会がないだけで。


(……駄目だ、思い付かん)

相澤は頭を抱えたくなった。

「この状況は良くない」とはっきり感じているのに、彼女相手に何を言えば説き伏せられるかさっぱりわからない。

あれ、もう終わり? と言いたげな視線が突き刺さる。


その空気を破ったのは、教室の扉が開く音だった。

瞬間、悠花の纏っていた冷気も、視線の鋭さも霧散した。

「おはよう、朝霧くん! …む? 相澤先生、おはようございます!」

「おはよう、飯田くん!」

「…ああ、おはよう」

悠花の変わり身の速さに驚いていたせいで、相澤は一瞬返事が遅れた。

それから、次々と生徒たちが登校して来たことで、この勝負は持ち越しとなった。

相澤は、正直ほっとした。

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作者名:紺青 | 作成日時:2019年3月4日 20時

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