クローバーの7 ページ8
｢やっぱりそうだったのね。あ、急に話しかけてごめんなさい。私、時雨
時雨Aの母です。｣
･
･
･
夏｢急にこんな時間に、ごめんなさいね。｣
御｢いえいえ、こちらこそこんな汚い部屋なんですが…｣
夏｢…一也君は、あの日、Aと約束をしてくれた男の子よね？｣
御｢はい、そうです。｣
夏｢そうよね、間違ってたらどうしようって思っちゃった。｣
夏子さんは、俺があの病院で｢友達になってやってくれ｣と話しかけてきてくれた時から、全然変わっていなかった。
夏子さん自身も、あの頃から変わらないように心がけているらしい。
記憶が消えてしまったAが、少しでも不安にならないように、と。
夏｢あの時は本当にありがとうね。いつかお礼が言いたかったんだけど、機会が無くて。｣
夏子さんは、相変わらず優しい笑顔で話してくれた。
夏｢あの子、あの後もずっと一也君のこと話してたのよ。
一也君が話してくれたこと、一字一句私に教えてくれて。
本当に楽しかったんだと思う。
そしたら、転入した先の学校の話に、『御幸』って子が出てくるものだからびっくりしてしまって。｣
御｢俺も驚きました。｣
夏｢急いで調べてみたら、すごい有名人で…｣
御｢有名人だなんてそんな！｣
夏｢それでね、あなたの経歴が、いつかあの子が私に話してくれた話そのもので…
それで今日、病院の帰りにちょっと覗いて見たらあなたが居たから、つい…｣
御｢…Aは、どうですか。｣
思い切って聞いてみた。
本当は知っている。昨日盗み聞きしてしまったから。
それでも、ほんのわずかな希望を含ませて、聞いてみた。
すると夏子さんは、優しい笑顔に少し寂しさを浮かべてゆっくりと口を開いた。
夏｢…あと3ヵ月だと言われたわ。｣
あまりにもはっきりと言ってくれるものだから、言葉が全くと言っていいほど出てこなかった。
しかし、夏子さんは少し間を置いてから、｢このままいけば｣と付け加えた。
御｢…このままいけば？｣
夏｢そう、このまま、何もせず今まで通り過ごしていれば。でも…それを伸ばす方法が、あるかもしれないの。
約束をしてくれたあなたには、知っておいて欲しい。｣
真剣な表情の夏子さんは、それをわざわざ言いに来てくれたらしい。
夏｢…それはね｣
そうして夏子さんは、慎重に俺に話してくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅色 | 作成日時：2016年10月1日 19時
