【設定集】魔術が紡ぐ物語 (ページ7)

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双子の話/黒ページ7

なんてことは無い、単純な話だった。

昔から、誰よりも何よりもずっと一緒に居た。それこそ、生まれるその前から。手を繋いで、片時も離れず、片割れの体温が隣から消えることなんてなかった。

だからなのかは、知らない。

気づいた頃には、自身の性格も相まって手がつけられなくなっていた。

隣にいてほしい。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ手が届く場所にいて欲しい。

どこに、行くんだよ。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ離れるなんてそんな馬鹿なこと

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ許せるはずがない

ただ隣にいてくれるだけでいいんだ。その為なら、何だってする。家のことも、外のことも、なんでも。

「アンタは、黙って俺に！守られてろよッ！！」

口をついて出た言葉は、嘘では無かった。しかし、本心かと問われれば戸惑った。確かに隣にいてほしいとは思っていたけど、そんな、ことは。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ"本当に？"

不意に聞こえた言葉は、きっかけを生んだ。そこからは、もう止めることなんて出来なかった。

今まで手を出していなかった魔術に手を出した。神様なんてものは、信用していなかったから、所謂黒魔術に。悪魔ならば、まだ信じられた。

初めて力を借りた悪魔に"願い"を聞かれた。迷うことはなく、俺は"兄貴のために"と答えた。それを聞いた悪魔は、ニヤリと面白そうな、楽しくて仕方がないという笑みを浮かべた。

ノワールに入った。最初は下の下で、できないことが山のようにあった。それでも兄貴の為にという言葉を糧に出来ないものを出来るようにした。

そして、1級の座につく頃には、できない事の方が少なくなっていた。

あぁ、兄貴。俺の大事な片割れ。アンタの為なら、俺はこんなことも出来た。全ては、兄貴の為に。

最初に悪魔に問われた答えは、いつの間にか呪いのようになっていた。

それから、しばらくした頃に。兄貴が姿を消した。

残されたのは空っぽの部屋と、"ごめんなさい"と一言書かれた紙だけ。

『純粋が故に狂った一人の少年』