烏野2年の孤爪さん その5

カラスが197羽 ページ35

夢主side






『秀くんとはぐれちゃった...』






秀くんが顔を真っ赤にしていたので、心配して声をかけようとしていたら、人の波に流され、見覚えのない場所にたどり着いてしまった



幸い、ここはさっきまでいた熱帯魚のコーナーではあるので、このフロアに秀くんもいるだろう








変に動き回らず、大人しく待ってよう







そう思い、正面にある水槽に目を移した


右手でアクリル板にそっと触れる







先程のような大きな水槽ではなく、少しこじんまりとした水槽だが、色とりどりの熱帯魚が泳いでいた





『きれい』








穏やかな気持ちでいるとふと、ある2匹のお魚さんが目についた








『ふふ、研磨みたい』








目に入ったのは、黄色と黒のお魚さんと、全体的に黒いが腹部の方が少し黄色いお魚さんだ



説明を見たところ、2匹とも色が違うがチョウチョウオという同じ種類らしい










黄色と黒が研磨で、黒が私




2匹が仲良く戯れる姿をみて、なんだか嬉しくなった











すると、突然お魚さんたちが別々の方向に行った


黄色と黒のお魚さん(研磨)は群れの方に、黒いお魚さん(私)は隅の何もない場所に





それを見て、一昨日の事を思い出す












痛いほど悲しい気持ちになった











正直、研磨が帰ってから、ずっとこんな感じで心に穴が空いた感じがする










研磨におまじないをしてもらったのに、引きづってばかりだ









秀くんとのお出かけはもちろん楽しい、でもずっとモヤモヤが残ったままだ


だから今日はずっとボーっとしちゃう













気晴らしどころか、更にモヤモヤしてしまった











1人で水槽を眺めていると、世界から切り離されたような感覚になる










『...ひとりぼっち』





分かってる


いつかは仁花もクロも...研磨も、離れていくって






ずっと一緒は無理だって






みんなが離れていった後、私はひとりぼっち


だって、研磨とクロは音駒のみんながいる

仁花も友達がいる









じゃあ私は？








3人が離れたあと、何が残る？




烏野のみんなは、私が高校を卒業すれば東京に帰るから疎遠になる


何年も私の事覚えてるとは思えない





ほら、ひとりぼっち











『...いやだな』




鼻の奥がツンとした













もういっそ、このまま水に溶けてなくなりたい













すると、空いている左手に何かに掴まれたような感覚が走った

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