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「A…‼」
直線距離にして、どれ位だろうか。
一瞬だけ見えた道路のその先は、再び往来する車によって遮られる。
この先にAが居る。
「零。」
「…A」
一瞬しか見る事は叶わなかったが、Aの表情は何か憑き物が取れたかの様にスッキリしたものに見えた。
「…が……す…だよ、ずーっと。」
「A?…今なんて言った?」
「今までもこれからも。」
降谷は、違和感を覚えた。
降谷の声が聞こえていないかの様に、会話が、成り立たない。
「A?」
まるで、降谷を置いていく様に。
「だから、幸せになってね。」
「何を…」
「バイバイ、降谷。」
Aが想定したより事態は悪化の一途を辿り、Aに残された時間は少なかった。
後悔はないが、不測の事態により自身の存在が表舞台に立たされた今、あの火災は警告以外の何物でもなかっただろうが、Aは1つの事実に気付いていた。
住居を突き止め家に侵入し、わざわざ爆発物を置いてその場を後にした。
そのまま家主である自分の帰宅を待てば、あの時と同じ様に自分を始末出来たかもしれないのに、それを敢えて鮫島(爆発物を置いたのが鮫島かは分からないが)はしなかった。
ずっと不思議だった。
手に入れた事件当時の現場写真を見るに、物の配置が変わっている部分が多々見受けられた。
それは、そこに住んでいたAにしかわからない違和感。
当たり前だが、事件が起こったあの家にその後住もうとする者が誰一人居ない中、あの家が取り壊されたり更地にされる事はなかった。
その理由は、今となっては何となく察しがつくが、その家に定期的に侵入者が現れ、何もない家の中を何かを探し回っては帰っていくという奇妙な事実。
そう、恐らく鮫島は
父が必死にかき集めた証拠の在り処を
またはその一部を
血眼になって探していたのだろう。
その証拠を、先に手に入れたのはAだった。
Aは、通話を切ると満足したかの様に明後日の方向へ歩き出した。
Aは右手の腕時計を確認した。
約束の時間が迫っている。
瞼の裏には、見納めたグレーのスーツが浮かぶ。
Aの口元には自然と笑みが浮かんでいた。
詐欺師の自分が言っても信憑性に欠けるだろうが
あの言葉に、嘘偽りは1つもない。
『零が一番好きだよ、ずーっと。
今までも、これからも。』
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - スカイさん» スカイ様、返信遅れて申し訳ありません!コメント下さり有り難う御座います(^^)スカイ様の涙腺を刺激出来たなら本望です笑。御礼を言うのはこちらの方です。短くはないこの作品を読んで下さり、そして感想まで下さり本当にありがとうございました!!感謝です。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - すごく感動しました。涙が溢れてきて胸がキューとなってこんな素晴らしい作品を作ってくださりありがとうございます (2020年6月13日 2時) (レス) id: 8bcf366f5d (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - しろさん» なんと嬉しいお言葉でしょうか。自己満足の小説に、その様なコメント頂けて嬉しいと感謝の他に言葉が見つかりません。落胆されぬ様にこれからも執筆させて頂きます!これからもよろしくお願いします。ありがとうございます! (2018年5月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 初めての感覚です。何か映画や連ドラを見てる気分でした。心の底から応援してます!!こんなに引き込まれるのは初めてです!!!! (2018年5月30日 18時) (レス) id: fe2831d1b4 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - KAZUKIさん» コメントありがとうございます!身に余るお言葉…そう言って頂けて本当に嬉しいです。10枚以上書き連ねたプロットが報われる様な気がします。話が重く複雑なので悩む事もありましたが、書いてきて良かったです。もうすぐ佳境です、引き続きよろしくお願い致します★ (2018年5月30日 0時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年5月20日 15時