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156 -第6章- zugzwang ページ40

走り出そうとする降谷の足を、引き止めるかの様に端末は鳴り響いた。
一瞬躊躇ったものの、降谷は大人しく通話ボタンを押した。

「…桂木、か?」

返ってきた声は、先ほどの嗄れた男の物ではなかった。

「…零?」

人から、フルネームではなく、親しみを込めて名前で呼ばれたのはどれ位振りだろうか。
耳に心地よく馴染む、鈴を転がすような声。
その声に呼ばれるだけで、いつも自分の名がより一層特別なものに思えた。

「……A…?」

何よりも、恋い焦がれた声。






「A…っ、無事なんだな⁉」

降谷は、ひとまず安堵した。
恐らく、鮫島はキュラソーの件の報告書を読んでAの生存を知ったのだろう。
あれは誰でも見る事は許されない機密文書だが、鮫島は警察庁の人間、しかも階級は警視監だ。
直接あの件に関わるセクションには携わらなくとも、閲覧する事は容易だっただろう。
そして、昨日の火災。
あれは、やはり間違いなくAに対する警告だったのだ。

「今どこだ…っ⁉」

「……」

「まずは公安…はダメだ…、俺の班で保護する‼それから…」

「格好良い。」

「は?」

思わず、上ずった声が出た。
焦る降谷を他所に、Aは昔の様にのんびりとした声で降谷の言葉を遮った。

「スーツ、似合ってるね。」

「お前な…こんな時に」

「大学の卒業式の時も似合ってない訳じゃなかったけど、うん、今の零の方が似合ってる。
…ネクタイしてれば、完璧だったのにな。」

「…っ‼…A、お前今どこに居る」

慌てて着替えたスーツにネクタイを通す時間すら惜しくて、丸めたままのそれはポケットにある。

降谷は辺りを見回した。
立ち尽くす降谷の横を、何台もの車が右へ、左へ、行き交う。
幹線道路であるその通りを走る車は絶えない。

車の往来の中、一瞬だけ筋を通した様に見えたその先。

「A」

あの日の、Aが居る。

157→←第5章 補足&登場人物(追加)



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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - スカイさん» スカイ様、返信遅れて申し訳ありません!コメント下さり有り難う御座います(^^)スカイ様の涙腺を刺激出来たなら本望です笑。御礼を言うのはこちらの方です。短くはないこの作品を読んで下さり、そして感想まで下さり本当にありがとうございました!!感謝です。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - すごく感動しました。涙が溢れてきて胸がキューとなってこんな素晴らしい作品を作ってくださりありがとうございます (2020年6月13日 2時) (レス) id: 8bcf366f5d (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - しろさん» なんと嬉しいお言葉でしょうか。自己満足の小説に、その様なコメント頂けて嬉しいと感謝の他に言葉が見つかりません。落胆されぬ様にこれからも執筆させて頂きます!これからもよろしくお願いします。ありがとうございます! (2018年5月30日 20時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 初めての感覚です。何か映画や連ドラを見てる気分でした。心の底から応援してます!!こんなに引き込まれるのは初めてです!!!! (2018年5月30日 18時) (レス) id: fe2831d1b4 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - KAZUKIさん» コメントありがとうございます!身に余るお言葉…そう言って頂けて本当に嬉しいです。10枚以上書き連ねたプロットが報われる様な気がします。話が重く複雑なので悩む事もありましたが、書いてきて良かったです。もうすぐ佳境です、引き続きよろしくお願い致します★ (2018年5月30日 0時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年5月20日 15時

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