【名探偵コナン】消えた捜査官4【降谷零】

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ー20:45ー

Aは、未だにふわふわと身体が浮いている様な感覚を引きずったまま、歩いていた。
今のAはとても身軽だ。
左のポケットは煤けている。
右のポケットにはスマートフォンとカード、そしてもはや意味をなくしたアパートの鍵が入っている。

降谷からの逃亡よりあまり時間が経過していない為、先程のマンションに戻るにはあまりにリスクが高すぎる。

「どこに帰ろうかなー…
そもそも他の場所無事かなー…」

「あれれー？Aさんどうしたの？」

Aの独り言に、思わぬ所から返事がきた。
止むを得ず振り返ったAは声の主がわかっていたかの様に、視線を大幅に下に下げた。

「こんな時間に小学一年生が何やってるのかな」

「あ、阿笠博士んちからの帰りだよ」

「そんなに面白い怪盗でも居たの？」

「…分かってんなら聞くなよな。
キッドの野郎、いつもと違って早々に居なくなりやがって…」

「…お疲れ様です。」

Aは誰に宛てた訳でもない労いの言葉をぽそっと呟く。
何か思い出し始めたのか、コナンはぶつぶつと不満をこぼし始めていた。
それを適当に聞き流すAは、行く先をまだ決めていなかった為、流れでそのままコナンと連れ立って歩く。

「Aさんは、これからどこに帰るの？」

一瞬、工藤新一に戻った少年も頭が冷えたのか、正体を知るAの前でも周りを気にしてか、コナンでいくらしい。
ただの世間話だろうが、この名探偵がそれを聞くと、どうも住居を探られているのではいう疑念を持ってしまうのは仕方ない。

「うーん…どこに帰ろうかなって。」

「…このままネットカフェとか行かないよね？」

「行かないよ。…当分、身分証明も出来ないしね。」

「やっぱりそういうの気にするんだね。」

コナンは意味ありげなAの「当分」という言葉を敢えてスルーした。
辺りは、徐々に見慣れた景色へと変わる。
コナンは突然足を止めた。

「で、何があったの？」

数歩歩いて、Aも足を止めて振り返る。

「何がって？」

「Aさん…焦げ臭いよ。
それで何もなかったなんて、僕が納得すると思う？」

その返答は、一言に尽きる。

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