【名探偵コナン】消えた捜査官3【降谷零】

96 ページ20

「…Aさん、この後どうするつもりなの？」

「……」

「お願い‼力を貸して欲しいんだ‼
カーチェイスで危ない目にあったのに、それでもここに居るって事は…事情を知った上で、何か理由があってここに来たんだよね？
…ノックリストを組織(やつら)に奪われる訳にはいかないんだ‼」

コナンは、跪いているAの背中に訴えかけた。
スクっとAは立ち上がる。
その表情を窺い知る事は出来ない。

「……やだよ」

「Aさん‼どうして」

名前は振り返る。

「それは、警察官の仕事でしょう？
詐欺師(わたし)の出る幕じゃない。」

「どうして…っ、Aさんだって…」

コナンは、続く言葉を飲み込んだ。
コナンの言いたいことが手に取るようにわかったAは冷静に告げる。

「私は、もう警察官じゃないんだよ。
今は犯罪者(あっち側)の人間。」









納得のいかない様子のコナンだったが、本来の目的を思い出し、ここから逃走したキュラソーを追うべく、その場を後にした。

Aは、観覧車内に安全な場所などどこにもないと分かってはいるが、風見をヘリの視界から隠す様に移動させた。









(誰だ…？)

手当でもされているのだろうか。
柔らかな手の感触と、節々の鈍い痛みで風見の意識は浮上した。

『ただでさえ激務だろうに、私のせいで仕事が増えてたらごめんなさい。
その上あの人の部下だなんて…同情します。
…でも、きっと男でも見惚れてついて行きたくなるんだろうなー…あの真っ直ぐな背中に。
…危ない時は、殴ってでも止めてあげてね。
…これからも、零を支えてあげてね。』

『…私にはもう出来ないから』

それは恐らく彼女の独り言だった。
ぼんやりとだが意識を取り戻した自分が聞いていると、彼女は夢にも思わないだろう。
瞼が石の様に重たくて目は開けられなかった。
まどろむ遠い意識の中で聞こえる声は、自身に触れる手同様、とても柔らかかった。

(貴女が…降谷さんの…ーー)

手が遠ざかるのがわかる。
依然、自身の身体は鉛の様に重く動かない。

(待ってくれ…ー)

(あの自信に満ち溢れた降谷さんが、貴女が関わると、途端に弱気になるんです。
…それはもう、面白いくらいに。
でも私は嫌いじゃない。
あの人も貴女が関わればただの一人の男になってしまう人間らしさに

国の為に文字通り命を燃やすあの人にも
心の拠り所があったのだと

嬉しさを感じずにはいられなかったから)

97→←95

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す