33話【邪気】 ページ34
.
「土門さん、おかしくなっちゃったらしいわよ」
麗は噂話を耳にしてしまった。
いや、正確には真実を耳にした。
ここ最近、目狩り令が頻発に執行され稲妻城の何人かが正気を失っていると話されている。
土門も神の目を持っていたゆえ、そうなのだろうと耳を傾けていると「鳴神大社にお祓いに行くみたいよ」という声が耳につく。
＿＿＿鳴神大社？
麗は知っていた。
神の目を奪われた人間を元に戻すには神の目を所有者の元に返さなければならない。
神の目はいわば所有者の願いだ。
人の願いが白辰の眷属である神子に祓えるなら目狩り令の被害者は発狂などしてないだろう。
そうではないから麗は神子の心配をした。
麗は鳴神大社に足を向け足早に歩く。
境内まで登ると話し声が聞こえた。
声的に神子だろうと思うが少しいつもより声が堅い。
これが宮司の神子なのかなと思いながら麗は上がる。
そっと様子見をしているとそこには神子、稲城蛍美、土門、その門下生、そして空とパイモンがいた。
『(どうして空くんとパイモンちゃんが…？)』
ひっそり息を潜めながらも神子の言葉に耳を傾けていると彼女は土門が発狂した理由をこと細やかに説明し、どうにもならないと言った。
やはり原因は神の目を奪われたことだった。
願い自体が土門を動かし、明鏡止水を成し遂げていた。
しかしその願いが失った今、彼は恐怖にもがくだけの存在になってしまった。
「ふふ、そう、あの未熟な妾の友人のように」
『！』
他の者はその神子の発言を気にしていなかったが麗はきっとその友人は影のことだと気づいた。
影はこの500年、ずっと一心浄土に留まり神子に別れすら言わなかったという。
そんな彼女は確かに未熟なのかもしれない、と麗は思った。
『(…でも、影さんより私の方がもっと未熟だ)』
同じ友を失い、家族同然の人も失ったにも関わらず影は自分なりの考えで永遠を貫き、神子はその稲妻を見守ってきた。
それと比べてどうだ自分は。
影の為とはいえ自分は逃げてしまった。
大好きな稲妻を去ってしまった。
どんなに悪くないよ、と言われても自責の念が麗を襲う。
冬国に囚われ、国を出る時は執行官同伴であり行動を制限され自由にすることすら出来なかった。
麗は一人静かに下唇を噛み締めていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 184人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空華(プロフ) - 花宮さん» コメントありがとうございます！感想書いていただいて嬉しいです！伏線張っておきながら全部回収できるか自分でも不安です…。これからも楽しみにしてください！ (2022年7月10日 23時) (
レス) id: 15a75e7f42 (このIDを非表示/違反報告)
花宮 - 初コメ失礼します！ぬしさまの作品は色んなキャラと絡んだり所々に沢山伏線が張られていて見てみてとても面白いです！続編がますます楽しみになる作品ですね､､更新待ってます！ (2022年7月10日 22時) (レス) @page10 id: d658c77d5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空華 | 作成日時：2022年7月4日 22時
