【名探偵コナン】笑って、マイヒーロー【紺.青.の.拳】

１１ ページ12

　
　
　挨拶もそこそこに、本題へ入ろうとしたタイミングで新たな訪問者が扉を潜った。
　数名の部下と共に飛び込んできたのはジョンハン・チェン氏。今回私をシンガポールへ招いてくれた張本人だ。
　
「毛利探偵！」
　
　彼は興奮気味に蘭パパへ駆け寄っては両手を握りしめた。ついにはツーショット撮ろうという始末で、この場の空気を一瞬に変えてしまったのだ。
　
『(お金持ちって変人が多いよね)』
　
　その言葉が自分へのブーメランになることに気付いてちょっとヘコんだ。
　気分を変えるために茶菓子のクッキーを頬張っていれば、レオンさんは立ち上がり私たちへ一つの提案を持ち掛けてきた。
　
「これから金庫室を見学してもらいましょう」
　
　チェンさんも同行するようで、レオンさんを始めとした私たち一行はエレベーターに乗り込むのだ。
　蘭パパとの会話に花を咲かせるチェン氏の言葉を流し聞きしつつ壁に凭れれば、すぐ近くに新一が居ることに気付いた。アーサーくんも一緒だ。
　
「おめー、偉く気に入られてんじゃねーか」
『気に入られている訳じゃないと思うけど』
　
　首を傾げた新一には申し訳ないが、彼は私を気に入っている訳ではない。
　顔を見るまで気付かなかったけれど、今から見に行くだろう最先端の防犯システムを他所から紹介されたことがあったのだ。
　お父様が宝石商であり宝石加工職人という肩書きがあるように、ウチには大なり小なり様々な宝石が無作為に転がっていた。生憎、金儲けに興味のない職人肌のお父様の提案でレオンさんの防犯システムが採用されることはなかったのだけれど、恐らく彼は諦めていないのだろう。
　ビジネス上でのやり取りだと考えてうんざりしてしまう。
　
　新一からはよく危機感がないとか、行動がハチャメチャだと指摘されるけれど、フォスター家に生まれた以上、人の善悪を見極める力は備わっていると思っている。
　そんな私から言わせてもらえば、レオンさんの言動は“興味ない”の一言に尽きた。
　
『そんなことより、私は早く“紺青の拳”が見たい！ 図面で見たことはあるけれど、実物を見るのはまだなんだよねー！』
　
　チェン氏も当日のお楽しみだと言って見せてくれなかったのだ。
　大会当日はなにかと忙しいだろうし、今日の内にじっくりと見れるのは非常に嬉しい。
　
　
　

１２→←１０

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す