【名探偵コナン】笑って、マイヒーロー【紺.青.の.拳】

１２ ページ13

　
「……宝石マニア」
『そこっ、聞こえてるから！』
　
　新一と他愛もない話を重ねている内にエレベーターは目的地へ到着したようだった。
　見上げるほどの巨大な扉の向こうは牢獄のような窓のない部屋だった。
　円形の筒のような部屋だと感じたのが私の第一印象だ。壁には幾つかの鉄板を繋げたような繋ぎ目があるのに、隙間という隙間は存在しない。
　中に入って上を見上げる私たちにレオンさんの解説が入る。
　
「壁面は耐熱合金でできており、決して破壊することは出来ません。また、」
『わーっ！』
「「！！？」」
『うわ、天井見えないくらい高いし声響くし、なんかたのしー！』
「「A！」」
『う〜、ごめんって。怒らないでよ二人とも』
　
　洞窟のような所って取りあえず叫びたくならない？
　そんな私の偏見を蘭と園子が同時に咎めるのだ。レオンさんに至っては苦笑いを浮かべる始末だ。
　うう、自重しますよーだ。
　レオンさんの部下である彼(名前長すぎて覚えてないとかじゃないから)が設置されていたパネルを操作し始める。すると、壁は移動し始めるのだ。
　飛び出したガラスケースの中には“紺青の拳”が埋め込まれたチャンピオンベルトが鎮座していた。想像よりも大粒のソレを食い入るように見てしまう。
　
『綺麗だなー』
　
　月並みの言葉であるが、言葉を探せないほどの美しさがあった。
　１９世紀末に沈没したと聞いていたけれど、大きさだけではない価値が眠っている気がした。
　
『遠目だからはっきり分からないけど、、インクルージョンやプレミッシュ……クラリティ(＝明澄度)の基準は間違いなく最高峰だ。産地がどこなのか気になるな。サファイアで最高の色と言われるコーンフラワーブルーにも引けを取らないだろうし、私もほしい！』
　
　ガラスに顔が付くんじゃないかという程の距離を近づければ、蘭と園子のため息が聞こえてきた。
　
「また始まったよ。Aの宝石バカ」
「こりゃあと１時間は此処から離れないでしょうね」
「はははっ、流石はAお嬢さまだ。貴女を招待して良かったよ」
　
　うん、私もチェンさんの誘いに乗ってよかったと思ってる！
　ありがとう、暇だったから海外旅行がしたいなーと呑気に考えてた数週間前の自分！
　宝石から目をそらさずにいれば、蘭パパが安心したように声を上げる。
　
「此処にある限り、キッドでも手出しは出来んでしょうなあ｣
　
　

１３→←１１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す