土産 弐 ページ31
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『……ろ、へん風呂に、行きたい、のへす……』
私は素直に本当のことを話す。
露天風呂……私は上手く言えただろうか?
無「露天風呂……?何故だ。まだ湯浴みの時ではないはずだろう」
本当のことを話しただけなのに。更に眉間の皺が深くなる。
私はめげることなく無惨さまに話しかける。無駄口だから、これ以上喋らない方がいいのかもしれないけど
『星そらが…見はいんです……。キレイ、でしょう…?』
無惨さまにも、分かって欲しい
共有したい。
そんな思いが沸いてきて、言葉になった。
出来れば__出来ることなら__
無惨さまと___
本当は、続けてそう言いたかった。
でも止めた。犬なんだもの。綺麗なものを二つも、独り占めしようなんて、きっとどうかしてる。
さっき蹴飛ばされたせいかもしれない
けどそんな思いも__願いも、叶うわけもなく。私の言葉に、表情を一切変えることなく告げられる。
無「勝手な行動をとるな。部屋から一歩も出るな。
命令だ」
『……はい…』
残念……
無惨さまの言葉に気分が落ち込こんだせいか、いつもと変わらない“分かりました”の六文字が言い出せなかった
頭を下げ、返事をすると、目の前の床の柄が切り替わり、見慣れたものとなった。
自分の部屋に帰されちゃった…
今日は空を見れなかったことを、もっと強く残念に思う。
無「A。」
『はい…』
私の部屋に戻ったはずなのに、何故かまだ無惨さまはそこにいて…
名前を呼ばれて顔をあげると、先程より少し和らいだ表情の無惨さまと目が合う。
その表情に、少しの安堵を覚える。
無「土産だ。くれてやる」
私は、自分の耳を疑った
“土産”……?
私がこてん、と緩く首をかしげると、ポイ.と手元に袋に包まれたものを投げられる。
土産?土産って?それは私のためのもの?
何で?なんで?
疑問が浮かんできて、頭の中を埋め尽くしていくなか、無惨さまが口を開いた。
無「大したものではないが、使うといい。……それから、花を。それと同じ“香り”だ」
側の椅子に腰掛けながら、そう言う無惨さまを、私はポカン。と口を開けたまま見つめる。
これは何?夢?…夢だな……?
だって、だって。
だってだよ。こんなの。
私はチラッ。と部屋を見渡す。
窓もどきの前に、机がおかれ、そこに花が生けられている。
私はそれを見てから、もう一度無惨さまに視線を戻した
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はるか - けいどくでしゃくしゃくで。。逃亡者どうまにあったらいいな。。もし、屋敷につれていかれたり。。 (2020年12月16日 20時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ちょこざいですね。中国語では失う鬼の漢字がはいっているんですよ。 (2020年12月8日 12時) (レス) id: d87eae5019 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ろんり的をやぶるのもどうまらしいです。笑った顔を見たことなくて嫉妬したみたいです。後、前回のは魑魅魍魎ちみもうりょうです。そして無惨をドラゴンにたとえて、ドラゴンロード。楽しみです。 (2020年12月4日 21時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - 魑魅魍魎があらわれておもしろくなりました。 (2020年12月2日 20時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
さら - ぶりょうをかこつなくてよかったね。頑張って。 (2020年11月23日 19時) (レス) id: 231375fc20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:穴 | 作成日時:2020年11月4日 18時