合図 ページ13
『合図』が来るまでの間、毎日のように頭痛には苦しめられていたけれど、薬のおかげもあって普段通り、いや普段以上に楽しい日々を過ごせた。
僕たちは遠い未来の事なんて考えていなかった。一緒にいられる一日一日を大切に生きていたんだ。その充実したひと時が、明日へつながると信じて。
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『合図』が来たのは、余命宣告をされてから三か月と五日が過ぎた日だった。幸か不幸か、ちょうど僕の家にいて、夕飯が終わってのんびりとテレビを見ているときだった。
飲み物を取りにふと立ち上がった瞬間、それまで二人で座っていたソファーに倒れこんだ。もう意識はなかった。すぐに母親によって救急車が呼ばれた。
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病院に運ばれてからは早かった。容体は瞬く間に悪くなった。先生がたくさんのコードや管をつけてくれたけれど、意識はもう、戻ることはなかった。
でも、表情は穏やかだったと思う。今までの人生…短かったけれど、大満足だ。
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誕生は、人の「生」の始まりだ、と智絵は言った。たくさんの人の「生」と共にいたいといった君は今、たった一人の「死」をどう受け止めているのだろう。それはもう僕にはわからない。
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豆娘(プロフ) - にしさん» 遅くなってすみません。ありがとうございます、ありがとございます。もともと原稿用に書いていたので、こういうサイトのだと読みにくくなるかと懸念いたしておりました。嬉しいお言葉、本当に、本当に、ありがとうございます!! (2012年7月30日 19時) (レス) id: 1e72e96e25 (このIDを非表示/違反報告)
にし - ヤバいです!!!涙腺がピンピンのはずの私が号泣しました;; (2012年7月5日 14時) (レス) id: 8cdf065869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆娘 | 作成日時:2012年4月20日 15時