水神様のお気に入り【原神】

フォンテーヌの水神様【過去編 7】 ページ43

sideA


「だったらそんなに寂しそうな顔をしないでよ」


一体こいつは何を言っているのかと理解するのに数秒を要した。俺の元を訪れたこの国の水神である少女、彼女の声は微かに震えていたが、それでもハッキリとしたものだった


「構うなと言うなら誰の目にも届かない所に行けばいい、話す事はないと言うなら、公爵の……リオセスリの言う事も聞かずに僕を放って行けばいい。最初に会った時もそうだ……キミは言葉では拒絶しても、逃げようともしないし、僕を突き放そうともしなかった。行動で示さなかった」


カツン、と靴が床を叩く音がする。彼女が一歩こちらに歩み寄ったのだ…かと思えば目元に巻いてある包帯に触れられ、俺は思わず後退ってしまった


「……目元を隠していたって、分かる者にはわかるんだよ。リオセスリだってそうさ……分かったからキミをこうして自分の目の届く範囲で作業させていたんじゃないのかい。キミも薄々感じていた筈さ、自分が監視下ではなく保護下に置かれているということに」

『っ…』


彼女の言う通り、監視されている訳では無いということは分かっていた。監視の視線よりも何処か温かさがあったから……だけど其れを認めたくなかった。認めてしまったら、俺の中の何かが崩れてしまいそうだったんだ………それなのに、この少女はそんな俺の胸の内も見透かしてるように言い放つ



「どれだけ強がっても……僕達から見たキミは、暗闇で迷っている小さな幼子のようだ」



何も言えずに固まっている俺に一歩、また一歩と歩み寄って来た少女は俺の胸に手を当て強く後ろに押しやった。簡単に押し退けられる筈なのに、この少女を押し退ける事が出来ない…


「その包帯を取って外界に目を向けないからキミは何時まで経っても暗闇から抜け出す事が出来ない。何時までも1人でさ迷って、暗闇に居続けるから生きる事が苦しくなるんだよ」


そう言って再び包帯に手が伸ばされる。取られてしまう…突き放せ、突き飛ばせ……そうでなくてもどうにかして彼女を止めろ、脳からはそう命令が出ているのに……身体が全く動かせない。シュルと布が解ける音が耳に入る。外された…取られた、嫌だ……嫌だ嫌だ！見たくない、この目に外界の景色を入れたくない！



『やめろ……！』



布が完全に外れる前にギュッと目を瞑るが「大丈夫だよ」と少女の掌が両の頬を包み込む









「怖くないから…目を開けてご覧」

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