メロピデ要塞の管理人【過去編 4】 ページ40
「今夜からはここで寝てもらう。即席のベッドだから寝心地が悪いだとかは言わないでくれよ。この椅子で寝る俺よりは良いだろう?」
『……貴方には、部屋はないのか』
「アンタが上に戻るまでは俺もここで寝泊まりする事にしたんだよ。いいから早く横になって寝るんだな」
俺はその日のうちにA君を独房から執務室へ移す事にした。特別扱いするしないの問題ではなく、此奴は少しでも目を離しちゃまずい囚人だと思ったからだ
《ねぇ公爵、彼を長く此処に居させちゃだめよ……陽の光を浴びられない場所にいたら、もっと酷くなっちゃう……この子の病気はすぐに治せないものだから》
執務室の扉の前でシグウィン看護師長に言われた言葉。彼女の顔がとても心配そうにA君の背中に向けられていたのを思い出す。病気…心の病だそうだ……摩耗に苦しんでいるとも彼女は言っていたな
「…」
……摩耗……天理がもたらす精神現象で数百年、数千年を生きるような長命の存在の精神は長い時を経ていくうちに遠い昔の感情や記憶が薄れていくらしい。最悪の場合、理性を失って暴走することになりかねないそうだ。どうやら見た目とは裏腹に、A君は随分と長寿なようだな
「なぁA君、眠れないようだから俺と話をしないか?」
『…』
「おいおい、俺が話しかけるまでずっと身じろいでただろ。今更寝たフリするなよ……なぁに、ただの軽い世間話さ。明日は晴れるだろうか、とか、キミの食堂の飯はどうなるかとかな」
『……そんな事を話してどうなる……意味の無い会話はするだけ無駄だ』
「…そうでも無いさ、他愛のない会話をする中にも色々と情報は取れるんだぜ。声色とか、話し方とかでな」
『……俺から情報を抜こうと?』
「おっと、そう捉えさせたら悪かった。俺にそのつもりはないから安心してくれ。本当に話をするだけさ」
何故あんな真似をしたのか…常日頃からしているのか、そりゃ勿論聞きたい事も言いたい事も山ほどあるが……直接聞いても負担をかけるだけだと看護師長から言われたからな。他愛のない会話で彼のストレスを少しでも和らげて欲しいと頼まれたんだから仕方がない
それから俺が話しかけても答えが返って来ることはなかったが、暫くすると彼から静かに寝息が聞こえてきたので俺も休む事にした
つまりそういう事【過去編 5】→←メロピデ要塞の管理人【過去編 3】
199人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風船ガム - (名前)さん» 嬉しいお言葉をありがとうございます!フリーナに加え主人公も大好きと言って頂けて嬉しいです!……出会い編…書きたいと思っております!これからも応援宜しくお願いします! (9月23日 21時) (レス) id: f0222be816 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 大好きです!主人公やフリーナちゃんが大好きでいつも見返しています( *´꒳`*)出会い編とかあったらさらに嬉しいです☺✨体調には十分に気をつけてお過ごし下さい。これからも応援しています‼️ (9月20日 21時) (レス) @page34 id: 56929420b7 (このIDを非表示/違反報告)
風船ガム - 鏡花水月さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!フリーナ可愛いですよね!…コメントは執筆のモチベーションに繋がります…ありがとうございます!(´;ω;`) (9月4日 12時) (レス) id: f0222be816 (このIDを非表示/違反報告)
鏡花水月(プロフ) - フリーナちゃん可愛すぎます!お話も読んでいて凄くキュンキュンするし最高です!(,,> <,,) (9月3日 21時) (レス) @page19 id: 39a51ddb92 (このIDを非表示/違反報告)
風船ガム - リリィさん» コメントありがとうございます!フリーナ可愛いから生まれた産物でございます…嬉しいお言葉ありがとうございます、頑張ります! (8月24日 20時) (レス) id: f0222be816 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:風船ガム | 作成日時:2023年8月23日 20時