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入場してすぐにも買ってくれたぬいぐるみと同じ種類で、サイズとお洋服がクリスマス仕様ぐらいしか違いはない。
おねだりしてみた時もいらねぇって一蹴してたのに、と段々甘ったるい感情がこみ上げてきて、唇を内側へ巻き込んでしまった。
「で、も…こっちも買ってくれたよ…?」
ただでさえ、してもらってばかりなのに。
おずおずと覗き込む私に、平然と首を傾げ見つめてくる雅人さん。
「じゃあいらねぇのかよ?」
真っ直ぐだった瞳が、少しだけいじらしそうに細まる。
にぃ、と緩く口角が上がるのは、私の鼓動を騒がせるには十分すぎた。
「いっ、いるいるいる!!嬉しい!!ありがとうございます!!」
「…ん。ならよし。」
いらねぇなら…とからかいたそうな声を慌てて遮りぬいぐるみたちを抱きしめる私に、必死かよ。と楽しそうに笑う。
袋にしまい身支度を整える私を待ってくれる雅人さん。
袖口を少し掴んだ手はすぐに取られて、寒さを理由に彼の上着のポケットの中。
厚底の靴が慣れているとはいえ、身長差を縮める努力がこうしてふと実るのはにやけてしまうのも仕方がなかった。
冷たい風が頬を冷やすけれどそのままなのは、冷てぇって文句の割には楽しそうに指の背が撫でてくれるから。
デートの予定が立った時点で服装や髪型を悩むのは、待ち合わせ場所で顔を上げた雅人さんの瞳が膨らむ一瞬を見たいから。
服装に合わせて変えるメイクを何か言われた事はないけれど、今日なんかちげぇな、って覗き込まれるのが好きだから。
雅人さんを知る度に、尽きることなく気持ちと行動が増えていくことが幸せでしょうがない。
同じ気持ちでいてくれることが嬉しくて、傍においてくれることが奇跡の様で、一度手にしたら絶対離したくない。
「…A、夜何食べてぇ?」
「んー…悩みますねぇ」
隣り合わせで座る電車内。
近場のディナーを探す雅人さんのスマホ画面を覗き込み、スクロールする指先を小さな声で止める。
「…ぁ」
「ンだよ」
「ここ、前雅人さんが行きたいっていってたとこ」
テレビで見たやつ、と詳細ページへ飛ぶ私に、暫く止まった声はやっと、よく覚えてんな。と零れ落ちる。
「……おあいこじゃないですか?」
空席情報やメニューやらを眺めていた視線を持ち上げると、ぱちりと絡む。満足げに痩せる瞳。
「…まぁな。」
緩く弧を描く口元につられる様に笑んで、予約の二文字をタップする指先を眺めていた。
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み(プロフ) - かるぴさん» 最後までお読みくださり、またこんなに心温まるコメまでありがとうございます…!!そう仰っていただけてとても嬉しく、執筆してよかったと救われました💕こちらこそありがとうございました💕🐕🎀 (9月20日 15時) (レス) id: c444dbe51c (このIDを非表示/違反報告)
かるぴ(プロフ) - とても面白かったです…!!ついつい最後は泣いちゃうくらい大好きです……!こんな神みたいな作品生み出してくださってありがとうございます😿😿! (9月15日 8時) (レス) @page48 id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - ペネロッペさん» コメントありがとうございます!!こんなにもお褒め頂けてとても光栄です、こちらこそありがとうございます✨ (2023年3月7日 16時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
ペネロッペ(プロフ) - 完結、おめでとうございます!! とてもとても大好きな小説が完結して嬉しい気持ちとどこか寂しい気持ちがごった返しですが、、、無事、完結という形で終わっていただいた作者様にもう一度、感謝を述べます!ありがとうございました!! (2023年3月6日 15時) (レス) @page48 id: 42dc98278a (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - 亜紫さん» お優しいお言葉ありがとうございます…!!とっても嬉しいです😍他作品も含めお楽しみ頂けます様頑張ります!😊🎁 (2023年2月20日 8時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2022年1月25日 15時