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これから始まる一日はいつもと変わらないはずなのに、どうしようもなく、いい日になりそう。
だから朝活などという言葉がはやるのかもしれない、と思いながら、最後のひとくちをほうりこむ。
「…ありがとな」
「お粗末様でした」
プラスチックの小さなお弁当箱を重ね、ナイロン袋の封を閉じトートバッグへとしまう。
隣り合う肩が暖かくて、覗き込んだ瞳は随分とおだやかだった。
「雅人さん」
緩く口角を引き上げる私と視線が絡んで、ようやく琥珀色が私を見つめる。
「…来年も一緒に、桜、見にこようね」
一瞬膨らんで、すぐに痩せる瞳。穏やかな笑顔で、大きな手が私の頭を撫でた。
「そうだな。」
貴方が私の感情を受け止めてくれるなら、他の事なんて目に入らないくらい暖かな気持ちで包んであげたい。
無意識に諦めかけたことも、ぜんぶぜんぶ、かなえてあげたい。
学者の様に頭はよくないし、ひらめきもない。図々しいかもしれないって時折不安になるけれど、不器用で、優しくて、まっすぐな彼の笑顔をいちばん近くで見ていたい。
今日みたいに笑ってくれたなら、たまの早起きだって待ち遠しくなってしまう。
髪を揺らした風が、視界に入らないどこかで桜を乗せる。
未だ街の喧騒を運ぶものは誰もいなくて、春を模す絵画の中に映し込まれた様だった。
身を寄せあって座って、両手で逞しい腕を抱き込んで、見つめたままの瞳。
長いまつ毛の隙間に日が落とし込まれ、琥珀のような、蜂蜜の様な黄色い瞳がきらきら輝いている。
「…雅人さん、大好きです。」
「……ん。…俺も。」
隠すこともなく緩んだ唇を、惜しくなるほど刹那の甘さが触れていった。
街は今日だけ、寝坊したらしい。
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み(プロフ) - かるぴさん» 最後までお読みくださり、またこんなに心温まるコメまでありがとうございます…!!そう仰っていただけてとても嬉しく、執筆してよかったと救われました💕こちらこそありがとうございました💕🐕🎀 (9月20日 15時) (レス) id: c444dbe51c (このIDを非表示/違反報告)
かるぴ(プロフ) - とても面白かったです…!!ついつい最後は泣いちゃうくらい大好きです……!こんな神みたいな作品生み出してくださってありがとうございます😿😿! (9月15日 8時) (レス) @page48 id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - ペネロッペさん» コメントありがとうございます!!こんなにもお褒め頂けてとても光栄です、こちらこそありがとうございます✨ (2023年3月7日 16時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
ペネロッペ(プロフ) - 完結、おめでとうございます!! とてもとても大好きな小説が完結して嬉しい気持ちとどこか寂しい気持ちがごった返しですが、、、無事、完結という形で終わっていただいた作者様にもう一度、感謝を述べます!ありがとうございました!! (2023年3月6日 15時) (レス) @page48 id: 42dc98278a (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - 亜紫さん» お優しいお言葉ありがとうございます…!!とっても嬉しいです😍他作品も含めお楽しみ頂けます様頑張ります!😊🎁 (2023年2月20日 8時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:み | 作成日時:2022年1月25日 15時