11話 ページ12
.
その目覚めは唐突で、そしてあまりにもはっきりしていた。
パチリと目を開くと、最初は暗闇しか見えなかった。
しばらくすると目が慣れてきて、そこで初めて自分がベッドの上に寝かされていたことを知った。おそらく、誰かが運んでくれたのだと思う。申し訳ない、と思って、そしてその違和感に気がついた。違和感は視角ではなくて耳＿＿聴覚の方にあった。
部屋の外から、何やら声が聞こえている。その声は、聞き覚えのないガラガラ声と、反対に穏やかなアルトだった。一体誰だろうか。お客さん？ ……それともまさか、泥棒？
そう思った途端に意識がはっきりと覚醒して、思わずと身体がドアの前まで吸い寄せられる。……もしも泥棒だったらどうしよう。きりやんさんとぶるーくさんに知らせなきゃ、と、ドクドク早鐘を打つ心臓を抑えながら極力音を立てないように耳をそばだてる。
声は、どうやら会話をしているらしかった。それなりに大きかったので、会話まで聞くことができた。
「＿＿それで？ これからどうすんだよロギアス」
ガラガラ声が、聞き覚えのない名前を呼んでいた。それに対して、アルトの声が答える。
「吸血鬼は回収しました。明日の朝には本部から人が来るはずだから、その時アレは引き渡しましょう」
「アレを取り戻すのにすげぇ苦労したもんなぁ。わざわざ死ぬほど嫌いな野郎どもに姿を変えてまで潜入してよ。ホントに、たかが吸血鬼一匹のために煩わせやがって。これだから人間もどきは好かねぇんだ。人間以下のくせに、いっちょ前に知能だけはありやがる」
「そうですね。火竜と人との混血児に精霊に育てられた異端の薬師。どちらも反吐が出るほど憎いですが＿＿苦労した分報酬は弾んでもらえるでしょう。何せあのお方は大層あの吸血鬼を惜しんでいらっしゃった」
「自分で貸したくせにな。ボスのあの収集癖だけは理解できねぇ。あんなの、死刑執行の手間を省く道具くらいにしかなんねぇだろうに」
「その考えには同意しますよ。……あぁそうだ、そしてその話に関連するんですけれど……彼女、一体何者です？」
「あん？ あの女か？ 言った通りだよ。放置して騒がれるのも面倒だから連れてきた。まぁ、サクッと殺っちまえばいいんじゃねえの、死刑囚だし、頭おかしいし。だって異世界だぜ？ 何言ってんだか。……つーかもう死んでんじゃね？ どうせ茶に薬でも盛ってたんだろ？」
「薬……えぇ。そうですね。盛りました。とてもよく眠れる薬です。永久に眠れるほどによく効く。……ですが」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 237人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ホロスコープ | 作成日時：2022年5月4日 16時
