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274話# 嵐の夜に ページ8

時計の針は7時半を過ぎた。

食卓ではヒロトが分厚い本を読んでいて、あたしはテレビ前のちゃぶ台で今日の講義の復習中。



ページを捲る紙音とパソコンのキーを叩く音が交差する中、玄関から声がする。





緑川「おーい、バスタオルくれー!」


ヒロト・A「!」




帰ってきた!


あたしは慌てて立ち上がり、脱衣所でタオルを取って玄関まで急いだ。





A「お帰り緑川。雨やばかったでしょ」


緑川「ああ。それよりこいつが。途中で偶然会ったんだけど倒れかけててさ」


A「え」





全身バケツを浴びたような格好をした緑川の隣に、人がいる。


緑川が通っている大学名が刺繍された黒いウインドブレーカー。

彼は緑川にかろうじて支えられて立っていた。





A「ちょっ、ちょっと待って!ヒロトー!!」


ヒロト「どうした」


A「ちょっとソファの上にバスタオル2枚敷いてくれる?」


ヒロト「うん(汗)」





緑川を手伝って、あたしはリビングのソファまで彼を支えて運んだ。


その人はぐったりとソファの上に倒れるように横たわった。

濡れた髪が顔を覆い、ウインドブレーカーからも雨水が滴っている。




A「緑川、風邪引いちゃうから熱いシャワー浴びてきて。ヒロトは戸締りと濡れた所拭いて」


緑川「ああ」


ヒロト「分かった」





二人は廊下に出て行った。

あたしはソファにいる人の髪を急いで拭いていった。



と、その時。



ぐいっ


??「A...?」


A「っ!?」





その人に右腕を掴まれた。


彼はもう片方の手で髪を掻き上げる。

とたんに、切れ長の鋭い目が現れた。




A「!!」





あたしは、この人を知っている。


遠い昔の記憶に閉じ込めた、大切な人。





A「修也...?」



小さく呟くと、彼はすぐにまた目を閉じてしまった。



間違いない。

目の前にいるのは豪炎寺修也だ。



額に手を当てると、尋常じゃない温度が感じられた。

275話# 目の前にいる人→←273話# 台風



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ノコ(プロフ) - 再開、嬉しいです。ななっちさんの作品はどれも心に染みます。ありがとうございます。大切に読ませていただきます。 (2020年5月27日 1時) (レス) id: a7f52ab7e6 (このIDを非表示/違反報告)
ななっち(プロフ) - Lakeさん» こちらこそありがとうございます〜 (2020年5月26日 20時) (レス) id: 6b7ac9b579 (このIDを非表示/違反報告)
ななっち(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございます! (2020年5月26日 20時) (レス) id: 6b7ac9b579 (このIDを非表示/違反報告)
Lake(プロフ) - 更新ありがとうございます〜! (2020年5月26日 20時) (レス) id: 7e7ce81c15 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - おかえりなさい (2020年5月26日 20時) (レス) id: 87b01b0a04 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななっち | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/trhthe/  
作成日時:2018年2月14日 23時

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