悪童が悪童じゃない話

バァカ*1 ページ1

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「花宮くん、今日、いい？」




今日も来たメール。
返事は決まっている。




「来いよ」



毎回決まったソレを送ると、数秒もしないうちにインターホンがなる。
玄関の前で待っていたなんて、聞かなくても分かる。


好きな子が遅い時間に自分の家へ来るなんて、傍から見れば幸せなんだろう。

傍から見れば、な。



俺達の関係は少し、いやだいぶ歪。
部屋に入って早々押し倒される彼女。

彼女の瞳は、涙の薄い膜で覆われている。



どうした、とか俺がいるから、とか……好きだ、とか甘い言葉は一切囁かない。
そして夜は明けた。






「……ごめんね」




彼女は朝早くに起きて出て行く。
俺に一言、謝って。

寝たフリをする俺は、果たして正しいのだろうか。
何度目か分からないため息を吐く。



こんな関係が始まったのはいつからだったか。
俺達は大学で知り合った。
その頃は、普通のニコニコ笑っている人としか思っていなかった。

だが、あるきっかけで俺はAを意識するようになった。
そこから始まった片思い。

だんだん仲良くなってきたとき、俺はAに彼氏がいることを知った。

その時の感情は今でも忘れられない。忘れられるわけがない。
酷く悲しくて、切なかった。

あんな感情初めてだった。


それからは純粋にAとは友達の関係を続けた。





変化が起こったのは、月が、綺麗な夜だった。

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