辞世のライムを刻むよ、キミに。 (ページ5)

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出会ったヤツはページ5

今日も池袋はいつも通りだ。
そして、この俺、山田一郎もいつも通りの一日を過ごした。

今日はスーパーで鶏ムネのタイムセールがあり、
二郎の提案で夕飯は唐揚げだ。
男三人、しかも二郎や三郎にいたっては育ち盛りだから、相当な量を作らなくてはならない。
本当にセールってのには感謝だな。
でも、しっかりと野菜も食ってほしいからな…
簡単に野菜炒めでも作るか。
残ったら、明日の朝ご飯や昼の弁当にもまわせるしな。

家にはストックのコーラがまだあったよな…？
…帰りに買って帰るか？

「一兄、コーラのストックはまだありますよ。
それに、一兄と一緒に飲もうと思って、
先日レモンフレーバーのコーラを買ったんです。」

「おっ、さすが三郎だな。気がきくぜ。」

頭を撫でると、三郎は顔を赤くさせながらはにかむ。
…あー、やっぱ弟って可愛いよな。
三郎は頭が良くて気がきくし、
二郎は身体能力がずば抜けて高い。
本当に自慢の弟たちだ。
俺にはもったいないくらいだ。

二郎に目を向けると、
二郎は後ろの方を向いていた。

「おい二郎、どうした。」

「あっ、いや…なんか、あそこにいる女の子がさ、
立ち止まってるから体調でも悪いのかなって……」

二郎の視線の先にはうつむいている一人の女の子。
一見中学生に見えてしまうくらい小さい子だ。
その子はゆっくりと顔をあげ、視線をさまよわせた。
空中に何度か視線をさまよわせた後、
彼女の目と俺の目がバッチリとあった。

「お前…」

俺は知っている、彼女の名を。
そして、反対に彼女も俺を知っている。
久しぶりにみた彼女の目は、
どんよりとくもっていて真っ黒だ。
目が死んでいるとはこのことか…
彼女には生気が感じからなかった。

時間にして数十秒…
いや、本当はもっと短かったであろう。
俺と彼女は、
ただ互いを認識しあうように見つめつづけた。