パパの憂鬱

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「もしかして、若武君のお父さんは弁護士で、
上杉君のご両親はお医者様かな？」



私は試しに言ってみた。


私の知っている「若武 章臣氏」は、
アメリカ、ニューヨークを本拠地に活躍する企業弁護士。私の勤める商社とも契約をしている。
ベトナムの収賄の件が丸く収まったのも、
彼の力によるところが大きい。



「上杉 知典氏」は、脳外科医として有名だ。と言っても彼の名を知ったのは最近、会社の同期が脳梗塞で突然倒れたからだ。彼が倒れたから私が代理で急遽ベトナムへ派遣される羽目になった…


同期が上杉医師の手術を受けることが出来たのは運が良かったらしい。
帰国後、見舞いに行った病院で命の恩人だと彼の名前を何回聞かされたことか。
奥さんの方は、心臓手術のスペシャリストととして名を馳せているのは、後から知った話だ。









その方達の息子が、娘のBFだなんてそんな偶然…





「そうだよ！パパ、若武と上杉君のお父さん知ってるの！？なんで！？」


「あらまぁ、そんな立派なご家庭の子だったの！
彩は何も言わないものだから…
じゃあいつお呼びしましょうかしら？
彩の誕生日じゃ、まだ随分先だし…」



「本当に呼ばなきゃダメ？」


「何言ってるのこの子は！
パパがせっかく言ってくれたんだから！」


「お料理は、何がいいかしら？」


「奈子ねー、ケーキ食べたい！」








私が呆然としているのに、誰も気がつかず、
妻と娘たちは、喋り続ける。








私は…









誰も見ていない、居間のテレビに映るお笑い芸人と一緒に言いたい…









まったく今日は


- 『なんて日だ！』 -









〜おしまい

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