曖昧なモルヒネ

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その画像は今日の夕方、そのグループLINEに、

＜結婚しました
秋には新しい命が誕生します＞

というメッセージと共に送信されたもので。

私達が別れたことを知らない友達は、次々と私個人に連絡をよこしてくる。

「どういうこと？
別れちゃったの？あんた達！」

みたいな。

そのグループLINEには私もいるってことをわかってて、元彼はそんな報告をしてきたのか。

それとも私の存在なんか、すっかり忘れてた？







「やべぇな、これ
誰も返信してねえじゃん
メンバー、15人くらいいるのに」

ヤツは遠慮なしに笑ってるけど、ほんと、笑ってもらえた方がまだマシだ。

きっとみんなは、私に遠慮して祝福メッセージも送れないんだろう。

「貸して」

ヤツからスマホを奪い取ると、高速でタップして、

「おめでとうございます
お幸せに」

そう送信した。

ヤツに見えるようにまた、画面を突きつけると、

「やるじゃん」

ってまた、ヤツはケラケラ笑っていた。







その日は何杯飲んだっけ。

ヤツは珍しく上機嫌で、店のドアにCLOSEの札を掛けると、いつの間にか隣で一緒に飲み始めた。

「こういうのが好みだったわけ？」

ヤツは私のスマホを眺めながら、無遠慮な言葉を投げかけてくる。

「顔じゃなくて、性格が好きだったんだって」

でももう、今となれば何がよかったのかすら思い出せないけど。

「なんか真面目そうな人じゃない？」

「うん、生真面目な人だったよ」

「生真面目な男が出来ちゃった婚？
しかも、あんたと別れてまだ1ヶ月も経ってないだろ
思いっきり二股かけてたんじゃん」

そうだよね。

私は見る目がなかっただけだ。

生真面目だと思い込んでた元彼は、本当はただの下衆野郎だったのに。









暖房のガンガン効いている店内。

いつもより強めのアルコール。

その２つは、確実に私をおかしくさせていた。

「もう髪、乾いた？」

彼の指が髪に触れる。

たったそれだけで、身体中に微電流が走るような感覚を受けた。

何？この感覚は。

「帰る…」

急に怖くなって立ち上がろうとした私は、バランスを崩して椅子から転げ落ちてしまう。

「大丈夫？」

助けに来てくれた彼の顔をじっと見つめてみる。

…あれ？

意外に好みな顔なんだけど。

そんな私の思考を読み取ったのか、彼は意地悪げに左の口角を上げた。

「もしかして、俺の遺伝子欲しくなっちゃった？」

「…ゲイのくせに」

「言ってなかったっけ？
俺、バイなんだけど」

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