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私はしばらく放心状態で、床の上に座り込んだまま。

というより、こんなに放心状態になってしまう自分に驚いていた。

覚悟はしてたはずなのに。

北山くんはそのうち、私に飽きて離れていくだろうって。

なのに今の私は、まるで人生が終わってしまったかのような感覚。

別に元彼が悪いわけじゃない。

私もいつかは打ち明けようとは思ってた。

でもそれは、今じゃなかった。







突然、ドアが開く音がして、

「ただいま」

普通のテンションで、彼は部屋に戻ってきた。

「ただいま」って何?

出て行ったんじゃなかったの?

「何?驚いた顔して」

そう言いながら彼は、後ろ手に隠していたコンビニ袋を差し出してくる。

「おでん買ってきた
Aの好きな具とか知らないから適当に買ってきたけど、また教えてよ」

勝手にテーブルに袋を置くと、冷蔵庫からビールを2本取り出しては、笑いをこらえたような顔をして手渡してくる。









ダンボールからDVDBOXをひとつ取り出した彼は、

「見る?これ」

とかって、やっぱり笑いをこらえたような顔。

「うん」なんて、無邪気に言えるわけないじゃん、この状況で。

「懐かしいわ、これ
俺も長いこと見てないかも」

って何?この笑顔。

その笑顔の奥には、どんな企みが隠れてるわけ?








「帰ったんだと思ってた」

まだ床に座り込んだまま、瀕死の状態で訊ねたのに、

「ちょっと考えさせてって言ったじゃん
ちょっとその辺を散歩してきて、コンビニも寄ってきた」

サラリとそう返されてしまう。

「待って
あの言い方だと、何日か考えさせてっていう意味なんだと思ってた」

彼は機嫌よさげに鼻で笑うと、おでんの容器を開ける。

「どれ食べる?」

…って、今それどころじゃないんだけど!

「怒ってないの?」

「俺に嘘ついてたこと?」

「そう」

「まあ、俺も嘘ついてたしね、最初
一般人のふりをしてたわけだから」

「…気持ち悪くない?私のこと」

「気持ち悪い?何で?」

「ガチヲタだよ?私
北山宏光の」

真剣にそうカミングアウトしてるのに、彼は弾けるように笑い出す。









「歩きながら、いろいろ考えたんでたんだけど
なんか、うれしかったみたいよ?俺
だって散歩しながら、ニヤけてたから」

「何がうれしいわけ?」

「好きな子が実は俺のファンだったとかさ
ニヤけない?普通」

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りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました!読んで頂けたら嬉しいです(/ω\*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました!!楽しく読ませていただいてます(*´ω`*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう!ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月7日 22時

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