検索窓
今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:477,894 hit

6 ページ6

「いいの?開けて」

静かにそう言った彼は、しゃがみこんでガムテープを外し始める。

もう予想はできてるはずだよね、このダンボールの中身の。

何重にも巻かれていたガムテープが剥がされて、彼はとうとうパンドラの箱を開けた。







見なくてもわかる。

中にどんなものが入ってるのか、全て。

それは、夥しい数のCDとDVDやコンサートグッズで。

彼は中身を確認するように、幾つかを箱から出して、奥からファイルを取り出した。

できれば、それを一番見てほしくなかった。

北山宏光だらけの写真が詰まった、フォトアルバムを。

最初から最後までパラパラとめくっていた彼は、チラリと私に視線を向けてアルバムを閉じる。

「…ごめん」

声を振り絞るようにして、そう謝罪したら、彼は黙って立ち上がった。

「俺のファンだったってこと?」

怪訝そうにこちらを見てくる彼の目を、まっすぐ見返すことなんてできなかった。

ただ、黙って頷くだけ。

軽蔑した?私のこと。

長い間、嘘をつかれてきたわけだから。








「もしかして、ずっと隠しとくつもりだった?」

やっぱり、顔を上げられない。

少し前までの私は、彼にグイグイ口説かれていい気分になってたのに、思いっきり形勢逆転してしまった。

「…ごめんなさい!」

勢いをつけて頭を下げたけど、彼からの反応はない。

彼が何も話さないもんだから、私はいつまでも頭を上げることが出来ず。

しばらくして、

「…もういいよ、頭上げて」

後頭部を軽く触れられて、恐る恐る頭を上げたら、彼は無表情で私の前に立っていた。

怒ってる風でもなく、かといって笑ってるわけでもなく。

「ちょっと考えさせて」

ぼそっと低音でそう告げると、彼はそのまま無言で部屋を出て行ってしまった。









ドアの閉まる音が聞こえて、私はようやく深く息を吐いた。

だって北山くんが出て行くまで、私は息を止めたままだったから。

まるで呼吸の仕方を忘れたみたいに、息ができなかった。

…ああ、終わった。

その場にペタリと座り込む。

夢から醒めてしまった。

慎重に慎重に進めてきた彼との関係も、一気に崩れてしまい。

本来私は、彼とは付き合うつもりなんかなくて、ただこんな風に特別な友達でいたかっただけなのに。

彼が身近にいるという感覚に麻痺して、欲が出てしまったのかもしれない。

そして私は、全てを失くしてしまった。

7→←5



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (890 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2501人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

りたわかめ(プロフ) - えりさん» ありがとうございます、多分、3ヶ月ぶりくらいに更新した気がします・・・。夏の間は死んでました(T^T) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ひろさん» 本日、移行しました!読んで頂けたら嬉しいです(/ω\*) (2020年9月6日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - わかめさん、更新ありがとうございました。めちゃくちゃドキドキです。 (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 久々の更新楽しみにしてました!!楽しく読ませていただいてます(*´ω`*) (2020年9月1日 22時) (レス) id: 57f2f46317 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - moraさん» わざわざ聞かせてみましたwwwいこう!ってwwww (2020年9月1日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りたわかめ | 作成日時:2020年2月7日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。