23 ページ23
「で?今年の夏はどんな感じだった?」
彼はそんな聞き方をしては、からかうような視線を私に向けてくる。
「いつもと同じだよ
家から出ないでエコ運転」
「本当にどこも行ってないわけ?」
「行ってないよ」
「花火大会とか、フェスとか」
「浴衣持ってないし、真夏に野外で音楽聞くとか無理」
正直にそう答えただけなのに、彼は弾けたように笑い出す。
「それが楽しいんじゃん
もったいなくない?」
「じゃあ北山くんは、いつも夏は何してる?」
「俺?
俺は、海はマストで
あと花火大会とか祭りとか、夏のイベントとかには積極的に楽しみたいタイプ」
…まあ、知ってたけどね。
私とはまるでタイプが違う。
なのに、こんなに惹かれるのは何でなんだろう。
「まあ、俺も今年の夏は何もできなかったけどね」
ちょっと寂しげな横顔を見せながら、彼はゆっくりとビールを口にした。
「俺の夏の思い出は、Aちゃんと夜に咲く花を見に行って、蛍を見たことかな」
そんなことを言いながら、鼻にくしゃりと皺を寄せて笑いかけてくるその笑顔は、やっぱりテレビの前ではあまり見たことのない素の笑顔だったから、
こんな時「好き」って気持ちが、抑えきれなくなる。
何で私は、こんな大変な人を好きになってしまったんだろう。
彼はここに来て僅か数分の間に、表情をくるくると変化させては、私を翻弄してくる。
時には弱弱しく見せたり、無邪気に笑って見せたり、
かと思えば、今までの表情は全て嘘だったんじゃないかと思わせるような、大人な表情を見せてきたりもする。
「久しぶりに会ったのに、なんか不思議な感じ
昨日も会ってたみたいな気持ちになる」
ぽつりとそんなことを呟いては、照れたようにくしゃりと微笑みかけてきたり。
「離れてても、Aちゃんのことは毎日考えてたからかな」
とか、思わせぶりなことを言って目を伏せてみたり。
本当にこの人は困った人だ。
普通の女子なら、簡単に勘違いしてしまうだろう。
だけど私は違う。
彼への恋心にはしっかり重い蓋をして、厳重に何重もの鍵をかけてるから。
なのに今日の彼は、なかなかしつこい。
「毎日、Aちゃんのことを考えてたよ
Aちゃんは?
この1ヵ月、俺のこと考えてくれたりしてた?」
こっちが蕩けちゃうような目をして、じっと見つめてくるとか。
…彼は一体、何がしたいんだろう。
1801人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りたわかめ(プロフ) - えぴさん» ありがとうございますm(__)m (2022年1月2日 21時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えぴ - ほんとにリアルすぎて最高です! (2022年1月2日 18時) (レス) @page21 id: 06d564cdce (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» 本日、移行いたしました。えりさんをドキドキワクワクさせられますように(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - renaruriさん» 更新いたしました。ちょっと急展開になってるかもです(/ω\) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - moraさん» やったー!いい感じに予想を裏切れてる?私w moraさんの予想を裏切れるよう頑張ります(*'ω'*) (2020年2月7日 23時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:わかめ | 作成日時:2019年9月28日 20時