花朝月夕

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「Aちゃんはどうして自己評価が低いんだろうって、北山くん心配してた
T大出てリケジョっていう最強の強みがあるのに、いつも自信なさげで自己否定的なのが、ずっと気になってるって
なんとかしてあげたいんだって」

…驚いた。

そんなことを考えてたんだ。

なんとかしてあげたいって、それはどういう目線で言われてるのかな。

「でね、またAちゃんと話したいって
今度またうちで飲み会するから来てよ」

そんなの…、全力で断るに決まってんじゃん！！！

「無理です」

「そう言わずに
うちの旦那も反省してるし、いつも以上に盛り上げるからって」

…そういうの、余計苦しくなるんだけど。

私は盛り上げられて、調子に乗るタイプじゃないし。

むしろ、引いちゃうと思う。

「北山くんに『反省してんなら、また今度の集まりにAちゃんを呼んでよ』って、頼まれちゃったのよ、旦那
ね？旦那の顔を立てると思って」

「…ごめんなさい
やっぱり私は、ああいう集まりは苦手で」

「朋ちゃんは来るみたいよ」

「朋が？」

「篠原くんね、朋ちゃんがお気に入りなの
あ、こっちは恋愛絡みのガチの方ね」

そんなの聞いたら、ますます行きたくなくなるじゃん。

やっぱり私には、陽のあたる場所は合わないんだ。









それから数ヶ月、霞さんは手を替え品を替え、私をあの集まりに誘ってきた。

でも私は頑なに断るばかり。

あんなに寒かった季節も、もう春になろうとしていた。

思えば彼に初めて会ってから、一年も経った。

彼は自信たっぷりに『俺らはまた会うことになる』なんて言ってたけど、

私達は一度も会うこともなく、春を迎えた。









そして今日も、霞さんは懲りずに私を誘う。

「お花見行かない？
篠原くんの実家で、桜を見ながらバーベキューだって」

「…やめときます」

「朋ちゃんも来るのに」

「朋、よく来るんですか？」

「けっこう来てるよ
どうやらあの二人、付き合い始めたみたいだし」

…待って！

そんなの、聞いてないんだけど！

「おいでよ
北山くん、最近来てないし」

「そうなんですか？」

「仕事が忙しいみたいよ」

「へえ…」

こういう会話も、もう飽きた。

「北山くんがあんまり来なくなったから、
Aちゃんのことで、北山くんに嫌われたんじゃないかって、密かに気にしてんだよね、旦那が」

…って、今日の霞さんもなかなかしつこい。









だから私は、とうとう霞さんだけに打ち明けることにした。

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