契約違反

４ ページ12

「A。」


体育館に繋がる渡り廊下でそう呼ばれた。

顔を見なくてもわかる。
私は振り向いて、答える。


「学校では、西野でお願いします。

室先生。」




体育教師の龍太は、今かなり忙しそうだ。

「そんな怒らんでも」

「別に怒ってないけど。」


「面白いことしてるんやな、お前んとこと、えっと…合同チーム。」

今は担任を持っておらず、生徒指導室に所属している龍太は藤原くんのクラスだとは認識してなかったようだ。


「あれ、藤原くんのクラス。」

「あっそうなんか、どおりでおもろいやつが多いと思った(笑)」


龍太は、私のとなりまで歩いてくると２人で体育館に向かって歩き出した。


「練習見に行くん？」

「うん。今日はバスケを」

「バスケは確か…あのイケメンがいい感じやった気」





「せんせーい！」


「え？」

龍太の言葉を遮るように来たのは、とある女子生徒。
かなり勢いよく私たちの間に割り込んできて、正直驚いてる。
見たことないから２年ではなさそう…


「あ、西野先生もいたんですね！」

「うん、そうだけど…」


「なんや、俺今」

「早く練習行きましょうよ、龍太先生？」


「もう、お前ちょっと扱い雑やねん！」

「すいません、西野先生！
さっきの話またちゃんと聞きますんで！」

そう言って、若い女の子に彼氏を引っ張られてくのを見ながら、私は小さくため息をついた。

・→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す