この手を離すな【銀魂】4

残念ながら : 沖田 ページ25

沖「もう、お前ぇらしく
生きていいんじゃねぃ？」


「……」



Aは眼を丸くして、
しばらく俺を呆然と見つめ返した。
小さな唇が音は発さずに



自分らしく、



と動いた。

そんな言葉、まるで
生まれて初めて知ったとでも
言うように。



沖「んな、難しいことじゃねぃだろ。
好き嫌いや、さっきの
居心地が良い、悪ぃでもいい。
お前が思った通りにすりゃいいんでぃ。
そこに優しさや図々しさが入ったって
お前らしさに変わりはねぇが、
我慢や空虚はお前をからっぽにするだけでぃ」



Aは一言一言、呑み込むように
噛み砕いて、消化していた。

こういう時、些かてめぇが嫌になる。
思っていた思いを言葉にして形作ると、
それは姿形を変えていて
上手く届けることができねぃ。
もっとそのまま、伝えてぇのに

俺には、



沖「！……それと、」



風に乗った匂で気づいた。
俺は、未だに眼を丸くして
必死に消化しているAに続ける。



沖「そんなに旦那に逢いたかったんで？」


「…っへ！？」


沖「さっき、ガキに話してたろぃ。
なんでぃ、旦那に用でもあんで？」


「いえ、何も…ないんですけど…」


沖「なんでい、話してみろぃ」


「…総悟さんには
親友はいらっしゃいますか？」


沖「は？」


「か、神威さんと逢って話していた時、
とても楽しくて…総悟さんと
お話ししている時もです！それで、
ああ、異性の友人と言うのは
こんな感じなの、かなって…」


沖「ああ？！で！？」


「は、はい！それで、あれ？って。
友人だと言ってくれていた銀時さんは
どこか、違う気がするなって…」


沖「…！」


「何が違うのかは、分からないんですけど。
でも銀時さんは、わたしのことを親友とも
仰ってくれていたなと思い出して、
…これは親友との違い、なのかなぁ？って…」



Aは俺を見上げ、答えを欲する。

っぜってぇ、答えてなんかやらねぇでさぁ。
あのバカ兄貴と俺が同等！？っざけんじゃねぃ！


…でも、間違いなく
聴いてるはずだろぃ。



沖「残念ながら、俺にも親友はいねんでさぁ」


「…そうなんですか」


沖「理由は分からねぇが、
旦那はAの中で特別ってことだろぃ？」


「あ！…はい！そうなんです！」



この眼の輝きまで、見せてやりたかったねぃ。



沖「今のまんまじゃ、わかんねぇなら
とりあえず、俺と親友になればいいでさぁ」


「親友ってどうしたら、なれるんですか？」


沖「…ハグする、とか？」


「ハグ」

全く、その通り : 土方→←御察しの通り : 沖田

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