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微かに ページ42

月「四辻さまは額が揃ったら、
すぐに参るつもりじゃったらしい。
ずっと前から考えておったそうじゃ」


日「…まだ決められないわよね。
うん!やっぱりここは一度帰ってもらっ、」


「…あの、」


月「…なんじゃ?」



ふたりの顔をばっと、見上げる。
どこか不安そうだ。
わたしのことなのに。こんなにも。



「お話を…、させて貰えますか」


日「四辻さま、と?」


「はい…。わたしなんぞの身分で
勝手ではありますが…」


月「身分など…何を言う」


日「…そうね、ここはもう以前の吉原とは違う。
当人同士が話し合うべき事だわ」



日輪さんは頷くと、わたしを
四辻さまが待つ部屋へと案内してくれた。
日輪さんは一度、わたしの眼を見つめ
車椅子を後退りさせた。



「…失礼致します」


四「A!!待っていたぞ!」



襖を開け、締め切る前に
四辻さまはわたしへと駆けて来た。



「申し訳ありません…、
お待たせしてしまって」


四「構わん!いくらでも待つ!
だから、どうか考えてはくれぬか!」



四辻さまは優しく微笑みながら、
でもわたしの肩を掴む掌は強く熱く、
相変わらず、御方だ。



「…何故、」


四「ん?」



何故、わたしなのか。

そう問うとして、唇を噤む。
何様なのか。
こんな御縁に疑問を投石するなど。



「…いえ。話は聞いております。
身に余る想いです」


四「何を言う。私はこの日を、
どれだけ待ち望んだことか。
仕事に追われながらも
Aに募る想いを日々膨らませて来た。
これからもそうだ。
Aに不憫な想いをさせはしない。
私の隣にいて貰いたい。それだけだ」


「……四辻さま…」


四「すぐに決めることではないことは、
よく分かっている。
Aは遊女などではなく、
ひとりの女として、考えるべき事案だ。
ただ…、」


「?!お、お苦しいのですか?
今水を…!」



ぱしっ
ぐいっ



「!?」



熱く見つめ合いながら、
言葉にしていた四辻さまが
急に胸を押さえ、顔を歪めた。
わたしは慌てて水を取ろうとすると
手首を掴まれ、胸に引き寄せられた。



四「……離れないでくれ、」


「!」


四「…はぁ。すまん。ほんとに、
分かってはいるのだ。だが、
今まで押さえ込んできた分、今
溢れ返ってしまって仕様がないのだ。

A、
私の処へ、来てはくれぬか」



わたしを包む身体が
微かに、震えていた。



「……はい」

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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時

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