何を ページ16
それから、何度も
銀時さんはふらりと現れた。
時に、
約束していた
美味しいお団子を
持ってきてくれたり
時に、
おかしな依頼を
受けた話しをしたり
時に、
かぶき町を取り締まっている
チンピラ警察の悪口を吐いたり
いつも、来ては
面白おかしい話しをしながら
お酒を飲み
朝方にまたな、と去って行く。
いつも、
何度も、
ただ、話しをするだけで。
週に何度も逢える訳ではない時でも、
わたしとした約束や話しを
決して、忘れることなく
そして、途切れることなく
逢いに来てくれた。
月「A。
今日は四辻さまから予約が入った」
「わかりました」
ああ、今宵は
銀時さんと話せないのか。
遊「あんな金無しに掴まって、お生憎。
ほんと言い様ね」
ああ、よかった。
他の遊女に奪われる心配はない。
銀「それでよぉ、うちの犬なんだけど
こんっなでっかくて…あ、今度写真持ってくんな」
ああ、これでまた
銀時さんが来てくれる保証ができた。
「……………え、」
日「…?どうしたの?Aさん」
「!…いえ、何でもありません。
へ、部屋の片付けをしてきます」
日「?…ええ」
何を。
突然、
ここ最近
自分の心に浮かんでいた考えが
わたしを驚かせ、思わず
声を漏らしてしまった。
慌てて、ひとりになり
もう一度、確かめる。
今まで、一度だって
誰か男の人を
待ったことなんて、なかった。
それなのに、
何を。
部屋に入り、
客との行為後の布団に眼をやる。
銀時さんは、
ただわたしを憐れみ
優しさで包んでくれてる。
何の、見返りも求めずに。
それとも、求めているのに
わたしが答えられていないだけか。
わたしにできることなんざ、限られているし
いつか、やはり求められるのだろうか。
いや、
きっと、銀時さんはしない。
そんなこと、望みもしない。
今更、自身が汚れているなどと
想い悩むことはないけれど
わたしが今、
銀時さんにしていることは
利用、なんじゃないか。
その優しさに漬け込んで
利用しているんじゃないか。
逢えないとか、
心配とか保証とか、
わたしは
なんて、ずる賢い。
銀時さんは
あんなに、素敵な人だと言うのに。
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作者名:美雨 | 作成日時:2019年2月27日 23時